クラウドを利用した映像伝送システムを構築し、世界最大級のポーカー大会をラスベガスより計150時間超にわたって連日ライブ配信
このたび「DMM TV」では、2024年7月4日から7月18日にかけて開催された世界最大級のポーカー大会「WSOP 2024」のメインイベント全試合について、海外スタジオにて日本語実況・解説版生収録を行い、連日ライブ配信を実施いたしました。
配信にあたっては、内製開発で垂直統合された可用性の高い「DMM TV」の配信基盤システムを活かし、通常であれば高コストな専用回線等を要する海外からのライブ配信を、非常にローコストかつスピーディーに実現し、15日間、計135時間を超える長時間にわたって安定的な視聴環境を提供いたしました。
国内向けインターネット動画配信サービスにおける海外ライブ配信の難しさ
インターネット網を用いた通信では、一般的に距離に比例してパケットロスの発生が増える傾向にあります。映像伝送においては、これが原因で映像がチラつくことや、映像が固まってしまう場合があります。このようにユーザーの視聴体験に悪影響を与える事象はライブ配信においては致命的であることから、長距離の映像伝送を安定的に行うには、様々な工夫が必要となります。
例えば、インターネットを用いずに、衛星による映像回線等を利用して海外拠点から国内拠点(スタジオ等)に転送する方法や、海外のデータセンター上に配信サーバーを構築し、そこで映像を受けてからユーザーに配信する方法など、様々な方法があります。一方で、これらの方法ではイニシャルコストが高かったり、ユーザー数によっては配信が不安定になってしまったりと、コストや安定性の面で考慮が必要な点が多々あります。
また、通常であれば、ライブ配信においては現場にネットワーク帯域保証された専用回線を複数本用意し、安定的な伝送を行える回線環境を構築することが一般的ですが、海外拠点において、そういった環境が必ずしも整えられる保証はなく、可能であったとしても人的リソースも含めて多くのコストが掛かる可能性が高いといえます。
このように、コストを最小限に抑えつつユーザーに安定的に映像を転送するには、様々な技術や仕組みの工夫が求められます。
「WSOP 2024」にて構築した配信システムの概要
今回の「WSOP 2024」の配信においては、既存の国内オンプレ環境にある配信サーバーを有効活用しながら、パケットロスに対して最大限の対策を施した方法でラスベガスの簡易スタジオからの映像伝送を行いました。
現場で利用するエンコードデバイスには AWS Elemental Link HD(※2)を用いました。AWS Elemental Link HDは機材コストが比較的安価な上、動画配信ワークフローを迅速に構築可能な AWS Media Services に統合されているため、現場での設定作業が不要で配信エンジニアが現場に出向く必要がなく、人的コストも低く抑えられます。さらに、機材が軽量であることから海外渡航時にも簡単に持ち運ぶことが可能です。
今回の簡易スタジオには専用線は敷設できず、家庭用のベストエフォート回線でのインターネット接続だったため、ネットワーク帯域の変動や不意なパケットロスが心配されました。AWS Elemental Link HDでは、接続の状態を認識して対応するアダプティブ・ビットレート・アルゴリズムが採用されており、ネットワーク帯域の変動に対して効果を発揮します。またパケットロスへの耐性の高いZixiプロトコルが採用されており、パケットロスが心配される回線でも途切れずに転送が可能です。
AWS Elemental Link HD から転送された映像は、AWS 米国西部 (オレゴン) リージョンの AWS Elemental MediaLive にて受信され、AWS Elemental MediaConnect を用いてAWS 東京リージョンの AWS Elementa MediaLive へ転送されます。AWSのリージョン間通信のため、ある程度経路が保証されたインターネット網を経由することができ、なおかつ AWS Elemental MediaConnect も Zixiプロトコルを利用することが可能です。
AWS Elemental MediaLiveからは当社のデータセンターへ転送され、既存の国内からのライブ配信と同様の基盤を用いて、トランスコードおよび各種パッケージング処理を行い、ユーザーの元に映像配信をいたしました(図)。
※2 AWS Elemental Link HDで使われているプロトコル等について:
https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/elemental_link_jp_announcement_jpmne/
<大手国内配信事業者に先駆けてStarlinkを商用ライブ配信の映像伝送回線に活用>
このたびの配信では、サブ回線としてSpaceX社のStarlinkを採用いたしました。
商用ライブ配信においては、メイン回線/サブ回線というように、複数の回線を用意し、回線冗長を図ることでユーザーに安定した映像を配信するのが一般的です。しかしながら、海外拠点のように物理的、コスト的に複数回線の確保が難しい環境においては、回線冗長を諦めざるを得ないシーンがあり、その場合は安定した映像提供を保証できないリスクが生じます。
そういったシーンにおいて、昨今注目を浴びる衛星インターネットアクセスサービスの活用が期待できる一方、その仕組み上、瞬間的な切断やパケットロスは避けられず、これが映像伝送での利用の障壁となっていました。
「DMM TV」では、AWS Elemental Link HDのパケットロス耐性やネットワーク帯域変動耐性に注目し、Starlinkを用いた回線でも安定して転送が可能か検証を行いました。結果として、30分に1度程度はパケットロス起因と見られる画面のチラつきが確認されましたが、概ね安定しており、サブ回線として十分に活用できると判断し、このたびの配信に採用いたしました。
このように、Starlink回線とAWS Elemental Link HDとを組み合わせることにより、海外からの安定的な長距離かつ長時間の映像伝送を実現することができました。また、StarlinkとAWS Elemental Link HDを組み合わせた海外拠点からの商用ライブ配信は大手国内配信事業者として初の事例(※1)となります。従来であればロケーションによるコスト増によって実現が難しい海外拠点からのライブ配信を、既存の配信基盤を活用しながら大きな追加コストなく実施できた点において、今後の多様な環境下での配信技術の向上に活かすことができる実績となりました。
「DMM TV」では、このたびの実績と技術的知見を活かし、今後も様々なロケーションや環境等に応じた最適な配信基盤システムの運用に取り組むことで、多種多様なライブ配信コンテンツの充実と高品質な視聴体験の提供を目指してまいります。
世界最大級のポーカー大会「WSOP 2024」をアーカイブにて配信中
「WSOP(World Series of Poker)」は、WPT(World Poker Tour)EPT(European Poker Tour)を含むポーカーの世界三大大会の中でも最大級の大会です。毎年ラスベガスで開催され、開催期間中は世界中から数多くのポーカープレイヤーがトーナメントに参加し、熱い戦いが繰り広げられます。2023年の優勝賞金は約17億円、参加者数は歴代最高記録となる1万人を越えました。「WSOP」の中で最も盛り上がりを見せるメインイベントは、世界中のポーカープレイヤーが1度は出場を夢見る舞台だと言われています。
「DMM TV」では、これまでアメリカのテレビ番組でのみ放送されていた「WSOP」を独占実況配信いたしました(※3)。「DMM TV」にて公開中のアーカイブ配信は、「Day1 D」を除き全てこのたびの配信システムによって転送された映像がそのまま利用されており、安定して配信された様子が実際にご覧いただけます。
「WSOP 2024」アーカイブ配信 視聴URL:
https://tv.dmm.com/vod/list/?keyword=%E3%80%90%E8%A6%8B%E9%80%83%E3%81%97%E9%85%8D%E4%BF%A1%E3%80%91WSOP+2024&sort=NEW
※3「PokerGO」による「WSOP 2024」メインイベントの配信における日本語実況・解説版をDMM TVにて配信
「DMM TV」について
アニメを主軸に、バラエティや2.5次元舞台・ミュージカル、ドラマ、映画など幅広いジャンルのコンテンツを提供する、DMMの総合動画配信サービスです。月額550円(税込)の「DMMプレミアム」に加入することで、新作から独占配信作品、そしてオリジナル作品まで、アニメ約5,900作品、エンタメを含む19万本※のコンテンツをスマートフォン・PC・TVアプリなどからお楽しみいただけます。
※ 2024年4月現在
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合同会社DMM.comについて
会員数4,507万人(※)を誇る総合サービスサイト「DMM.com」を運営。1998年の創業以来、多岐にわたる事業を展開し、現在は60以上のサービスを運営。動画配信や電子書籍、アニメなどの多様なエンタメサービスに加え、3DプリントやEV充電などのハードウェア分野、web3やAIなど最先端のテクノロジーを取り入れた事業など、様々な事業を手掛けています。2022年にはサブスクリプション会員システムの「DMMプレミアム」を立ち上げ、あらゆるエンタメ体験をシームレスにつなぐ「マルチエンタメ・プラットフォーム」の創造を目指しています。今後も、コーポレートメッセージ「誰もが見たくなる未来。」とともに、変化と進化を繰り返しながら、新たな事業に挑戦してまいります。
※2024年2月時点
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