プロジェクトストーリー
プロジェクトストーリー
後発で参入し、当初は大苦戦。それでもDMM英会話が業界トップクラスに躍り出せた理由
- チャレンジある人にチャンスあり
- 経営層に遠慮も忖度も必要ない
- 間違いなくカオス。 だから楽しい
- 非上場企業にしかできない経営判断
- サービス概要
「DMM英会話」は、国内最大規模のオンライン英会話サービスです。
120カ国以上の国籍の英会話講師が1万人以上在籍しており、好きな講師とマンツーマンで英会話レッスンができます。 講師の拠点も幅広いので、24時間365日好きな時にレッスンができるのも魅力です。 デイリーニュースを始めとした英会話教材も多数用意されています。
入会金や教材費がなく、1レッスン25分を毎日受けても、月6,980円から利用できます。
現在は、韓国や台湾、タイなどでもオンライン英会話サービスを展開しています。
- 参入背景
当時、100社以上の中小規模のオンライン英会話サービスが乱立しているマーケットだったが、DMMでより魅力的なサービスに磨き、適切なマーケティングをすることで多くの新規ユーザを獲得して市場自体を大きく成長させることができると確信。 亀山会長が直接雇用した人材に新規事業の立ち上げを任せ、DMMが半年間サポートする「亀チョク」で、上澤貴生氏がオンライン英会話サービス「DMM英会話」を立ち上げる。
権限移譲して任せてもらえたからこそ、急成長できたDMM英会話
「大きな権限を持たせていただけるので、何かと細かく決裁を仰ぐ必要がありません。 そうした会社だからこそ、DMM英会話はここまで成長できたのだと思います」
そう話すのは、亀チョク本部英会話事業部長の坂根健太郎氏。 DMM英会話のトップであり、創業メンバーの一人です。 DMM英会話は、「一番続けやすい英会話へ」というブランドメッセージを掲げた、国内最大級のオンライン英会話サービスです。
最大の魅力は、アメリカやヨーロッパ、アジア、アフリカなど、世界120カ国以上の国籍の英会話講師が1万人以上在籍していること。 今日はアメリカ人講師、明日はセルビア人講師、明後日は南アフリカ人講師、と自由に講師を選んで、マンツーマンで英会話レッスンができます。
「利用されているユーザーは、英語の読み書きはできるけれども、話したり聞いたりする機会がない方が多いですね。 DMM英会話なら、マンツーマンで好きなだけ話したいことを話せます。 また講師の文化、習慣、趣味、職業なども多様なので、レッスンを通して多様なバックグラウンドや価値観に触れられるのも魅力です」(坂根氏。 以下同)
後発で参入。ユーザーが獲得できず大苦戦
今でこそ業界トップクラスのユーザー数を誇るまでに成長したDMM英会話ですが、開業当初は早期撤退もちらつくほど、大苦戦しました。
サービス開始は2013年2月。 きっかけは、亀山会長が新規事業の企画から運用までを担う優秀な人材を集め、領域を問わず様々なアイデアを実行可能かどうかまで検討し、半年間支援する「亀チョク」です。 その一環として、上澤貴生氏からオンライン英会話サービスへの参入が提案されました。
当時、日本には100社ほどのオンライン英会話サービスがあり、DMMは後発での参入でしたが、検討した結果、勝機はあると考えました。 先行している会社で大手企業はなく、潤沢な資金を持ったDMMならすぐに業界トップの座を狙え、市場も拡大できると踏んだからです。
オンライン英会話はネットのサービスですが、サーバーからコンテンツを配信するのみのインターネットサービスではなく、海外にいる実在する人間の講師がレッスンを行います。 そのため、人的マネジメントに大きな手間がかかるビジネスであり、一般的にIT大手と呼ばれるところは参入しづらいという読みもありました。
フィリピンに拠点を置いて、英会話講師を集め、わずか半年でサービス開始。 ところが、目論見は外れました。 予想以上にユーザーが獲得できなかったのです。 苦戦の原因は、他社との差別化が図れなかったことです。 他社よりもWebサイトの見栄えや使い勝手を良くしたものの、講師は競合他社と同様のフィリピン人講師だったため、他社との違いを明確にできませんでした。 それでいて、価格は他社より高く設定していたので、金銭的なメリットもありません。
料金半額キャンペーンをおこなうことでユーザーは少しずつ増えたものの、本質的な差別化ができているとはいえない状況でした。
講師を求めて東欧へ。 優秀なセルビア人講師を発掘
いかにして差別化を図るか。 そこで取り組んだのが、さまざまな国籍の講師を集めることです。
DMMに限らず、オンライン英会話サービスは人件費の安いフィリピン人講師を採用している会社が多いのですが、ユーザーからすれば他の国の講師に習ってみたいというニーズもあるはずです。 多様な国の講師を集めれば、大きな差別化になります。
講師を発掘するために、経営陣が白羽の矢を立てたのは東欧です。 わずかなつてを利用して、まずはリトアニアへ。 日本語学科のある大学のアジア文化やアニメの研究会でビラを配り、数人の講師を採用しました。
その流れで発掘したのが、多くの優秀なセルビア人講師です。 勤勉で授業の質が高い講師が多く、ユーザーからも高く評価されており、いまでもDMM英会話を支える大事な存在です。 さらに、セルビアでは講師をマネジメントするコーディネーターも採用でき、フィリピンに次ぐ第二の拠点を設置できました。
それによってアメリカ大陸やヨーロッパの講師を開拓できるようになっただけでなく、フィリピンとの時差が6時間ほどあるので、24時間365日体制で英会話講師を用意でき、日本から遠く離れた国にいるユーザにもレッスンを提供することができるようになったのです。
もちろん多様な国の講師を雇うのは、簡単ではありません。 国によって商習慣や法律、文化が異なり、手続きも異なります。 そうした対応について、その都度本社に決裁をとっていたら時間がかかり、せっかく見つけた人材を逃すこともあります。
「しかし、DMM英会話は権限を大幅に委譲していただいたので、現場の判断でどんどん行動できました。 6か月でサービスを立ち上げ、会員数が少しずつ増えてきている信用もあったと思いますし、亀山会長の直轄組織だったこともあると思いますが、ここまで任せていただける会社はそうないと思います」
教育では勝負できない、とエンターテイメントに寄せる
サービスのコンセプトを「エンターテイメント」に寄せたことも、差別化につながりました。
競合のオンライン英会話サービスの多くは「英語学習」を前面に打ち出しているのに対し、DMM英会話は、学習よりも「海外旅行気分で英会話を楽しむ」ことを売りにしました。
オリジナル教材も、さまざまな国籍の講師との英会話を楽しんでもらうことを主眼に置いて作られています。 なかでも好評なのが「デイリーニュース」です。 日本人が興味を持つような最新ニュースの英語記事を毎日配信しています。 夜にサッカー日本代表の試合があれば、翌朝には配信されるので、タイムリーな話題でおしゃべりできるわけです。
「オンライン英会話サービスに限らず、英語教育を打ち出している会社は世の中にたくさんあります。 そういった会社と後発で勝負しようとしても太刀打ちできません。 それならば、もともとエンターテイメントのイメージを持った会社なのだから、そこを生かしたほうがいい。 『いろいろな国の講師と英会話をするのは楽しい』ということをマーケットに伝え続けてきました。 それが一つの成功要因だと思います」
大幅な割引キャンペーンを数年間続けたことで、サービス開始から5年は赤字が続きましたが、それによって多くのユーザーを獲得できました。 「割引価格ではすべてのコストをまかなえませんが、亀山会長が『このまま行け』と後押ししてくださいました」
資本力のあるDMMだからこそ続けられたことでしょう。
チャレンジングな提案も受け入れていただける環境がある
「さまざまな国の講師と楽しく話せる」というDMM英会話最大の魅力を、今後も追求していきたい、と語る坂根氏。
2023年には、さまざまなシナリオでロールプレイをしながら英会話ができる日本初(※1)のChatGPTを搭載したAI英会話チャット「DMM英会話 AI Beta版」を開発し、会員へ無料提供しました。 これにより、外国人講師との会話に緊張してしまう人でも、まずはAIで練習してから講師との会話に切り替えるなど、状況に応じて英会話を楽しむことが可能になりました。
また、DMM英会話はTo C向けの事業だけでなく、企業研修サービスや独自開発のビデオ通話システムおよび英会話教材をOEM提供するサービスなど、To B向けの事業も拡大しています。
「オンライン英会話の一本足打法だけではリスクが高いですからね。 極端な話、新事業に関しては英語にこだわる必要もないと考えています。 もちろん亀山会長や村中COOと相談しながらになりますが、そういったチャレンジングな提案も受け入れていただけるような環境がある。 柔軟に考えたいですね」
DMMは、規模が大きくなった今も新事業を次々立ち上げようというベンチャー企業の雰囲気がある、と坂根氏は言います。
「うちの事業部は外国人が社員の半分を占めるように、事業部ごとにカラーもまったく違います。 さまざまな人にとって面白い仕事ができる環境だと実感しています」
- ※1 自社調べ。 リアルな講師との英会話レッスンを提供する、日本企業のオンライン英会話サービスでは初となります。