多岐に渡るジャンルで40以上のサービスを展開し、2019年2月期にはグループ業績が2,200億円を突破したDMM.com Group。約20のグループ会社とグループの母体であるDMM.comの各事業部のそれぞれが、別々のスタートアップのように事業に取り組んでいることが特徴です。
本記事では、クイズ買い取りサイト「AQUIZ(アクイズ)by DMM.com」(以下、「AQUIZ」)を運営するAQUIZ事業部の社員3名にインタビュー。2018年5月に「AQUIZ」をリリースし、2018年12月にわずか「1円」で同サービスをDMM.comへ事業譲渡した現AQUIZ事業部長である飯野太治朗さんと、ビジネスサイドを担当する森田龍太郎さん、デザイナーを務める長谷川峻一さんに話を伺います。
「定例ミーティングを開催しても、5分で終わってしまう」ほど、普段からメンバー全員が深くコミュニケーションを取っているAQUIZ事業部。すべてのメンバーが職種に関係なく意見し合い、“ホームランを打つ”ために一致団結する「プロダクトファースト」なカルチャーに迫ります。

「10億円規模の事業をつくっても意味がない」AQUIZ事業部が“ホームランだけ”を狙う理由

―事業譲渡という形でDMM.comに合流されたAQUIZ事業部。他の事業部とはどういった点が異なるのでしょうか?

飯野 太治朗(いいの たいじろう)ビジネスプランニング本部AQUIZ事業部 部長
1990年生まれ。19歳のときに最初の事業として行商を開始。 翌年2011年に移動販売事業を立ち上げて1年で売却し、売却金を元手にWeb受託会社を設立。その後、フードデリバリーやウェディングメディアなどさまざまな事業を立ち上げ、売却を繰り返す。2018年5月にリリースした「AQUIZ」を同年11月に1円でDMM.comへ売却し、DMM.comへジョイン。


飯野:入社歴が浅いメンバーが集まり、スタートアップライクな環境で働いている点で、他の事業部とはかなり雰囲気が違うと思います。僕たちは、チームミッションとして「DMM.comの次の10年を創る」ことを掲げているんです。
100~1,000億円ほどの売上を生み出せる、ホームランと言えるプロダクトをつくりたい。僕たちのチームが一番やってはいけないのは、10億円規模のヒットを狙うことです。DMM.comほどの規模の会社にとって、10億円は経費削減などの調整で変動する額なので、強いベンチャースピリットを持ってジョインした僕たちが目指すべき数字ではありません。今は「AQUIZ」でホームランを狙おうと思っていますが、この打席でホームランを打てないと判断した場合は事業を閉じて、次の打席を狙いにいくつもりです。

―「AQUIZ」を加速させるためだけにDMM.comに合流したわけではないのですね。

飯野:僕は自分の会社かDMM.com傘下かはどちらでもよくて、とにかく35歳までに多くのプロダクトをつくりたいんです。僕は自分の「創造的人生」の寿命は10年しかないうえ、プロダクト開発にフルコミットできる体力があるのは35歳までだと思っています。今までいくつかの事業を売却したけれど、プロダクトをつくるための貴重な時間が減ってしまうため、ロックアップつきの売却は避けていました。
しかし「AQUIZ」は今までつくってきたメディアやECと違い、システム化が難しかったため、売却するとしたら僕も合流してコミットしたかった。5~6社から投資・買収の相談をいただきましたが、自分がジョインしてフルコミットしたいと思える企業は、国内ではDMM.comだけだったため、自分から連絡しました。結果を残せば次もプロダクトをつくる機会がもらえるし、そのための資金や、情熱を持ったメンバーも集まると思ったんです。

―そもそも、わずか「1円」で事業譲渡したのはなぜなのでしょうか?

飯野:まずはDMM.comの人たちの「信用」を稼ぎたいと思ったからです。そのために、まずは僕たちがDMM.comを徹底的に「信用」し、事業を1円で譲渡しました。結果を出せば、さらなる信用が稼げるし、報酬は後からついてくると考えたんです。

ジョイン初日のメンバーの提案で、ツールを“スピード導入”。良い意味で朝令暮改のカルチャー

―ビジネスサイドを担当されている森田さんは、普段どのようなお仕事をされているのでしょうか?

森田 龍太郎(もりた りょうたろう)ビジネスプランニング本部AQUIZ事業部 副部長
大手ERPパッケージベンダーにてITコンサルティング業務、およびプロジェクトマネジャーとして複数の大規模システム導入プロジェクトに従事。その後、リクルートライフスタイルにてプロダクトの企画・ディレクション業務や旅行業界協同の不正予約対策コンソーシアムの設立に携わった後、2018年にDMM.com入社。社長室、経営企画室を経て現職。


森田:僕のミッションは、「DMM.comの次の10年を創る」をミッションに掲げる事業部と、その第一弾プロダクトである「AQUIZ」の未来を、飯野が長期的な視点で構想できる環境づくりです。それゆえ、短・中期の事業構築のためのマーケティングからグロースハック、財務管理、採用戦略、プロジェクトマネジメントまで幅広く担っています。
AQUIZ事業部にジョインするまでは、少人数のチームでゼロから事業を立ち上げ、中長期的な視点で事業全体を見渡した経験はなく、事業の一側面にしか関われないことが多かった。だけど今ではあらゆる意思決定に関与できる環境で、働き方も前職とかなり違い、新鮮で面白いですね。

―どういった経緯でDMM.comに入社し、AQUIZ事業部にジョインされたのでしょうか?

森田:僕は「AQUIZ」チームがDMM.comに合流する一週間ほど前に中途入社し、配属された経営企画室から派遣される形でAQUIZ事業部にジョインしました。飯野はじめAQUIZ事業部の人たちは、自分とは経歴も生き方もまるで異なるタイプの人たちばかりで、最初は「お互い相容れないだろうな」と思いました。
しかし一方で、自分が持ち合わせている度量衡では測りきれない魅力や才覚を飯野から感じたんです。「AQUIZ」自体も、シンプルな設計ながらも世の中の人びとがまだ気づいていないであろう魅力と可能性を大いに感じ、AQUIZ事業部への完全な移籍を決めました。
僕は1社目のITコンサルではPjMを、2社目のリクルートではPdMを務めており、これからは徐々に、経営企画や事業立ち上げへ軸足を移していく予定でした。本来はもうしばらくPdMを続け、社内異動で経営企画などに移ろうと考えていたのですが、ハンズオンでがっつりと0→1フェーズの事業の立ち上げに入り込めるポジションと聞き、プランを前倒ししてDMMへの転職を決めました。
前職のリクルートは非常に良い会社でしたが、自分には綺麗な環境すぎるというか、もっと“激動”の環境で、泥水のなかを突き進める場所を求めていたんです。

―デザイナーの長谷川さんはいかがでしょうか?

長谷川 峻一(はせがわ しゅんいち)デザイナー
2017年DMM.comにデザイナーとして新卒入社。DMMの決済プラットフォームや複数サービスのデザインを経験し、AQUIZのプロダクトデザインを担当。


長谷川:僕は2017年にデザイナーとして新卒入社しました。一年目は、さまざまな部署を渡り歩いて経験を積みました。当時は主に既存サービスのデザイン業務を手がけていたのですが、「ゼロからプロダクトをつくれる場所で働いてみたい」と思っていたときに、ちょうど「AQUIZ」チームがDMM.comに合流したんです。「これはチャンス」と、社内公募制度でAQUIZ事業部に応募してジョインした形ですね。

―ゼロからのデザイン業務をスタートして、どういった変化がありましたか?

長谷川:今までは、機能や世界観がすでに構築されているプロダクトのデザインを担っていたため、最終的なアウトプットのイメージが想像しやすいものが多かった。しかしAQUIZ事業部では、飯野とコミュニケーションを取り、彼が持つイメージへの解像度を高めるところから始まります。彼の考えをデザインに落とし込んでいくフローは今までの仕事とまったく違い、新鮮でした。

飯野:あと僕らのチームのデザイナーはアプリ画面のデザインをして終わりではなく、組織づくりやそのためのツール選定にも関わってもらっています。

長谷川:僕がジョインした初日、チームで利用するデザインツールがまだ決まっていませんでした。普通だったら多くのデザイナーが操作慣れしている「Sketch」を使うけど、デザインがつくられる様子を誰もがリアルタイムで確認できる「Figma」のほうが、僕たちのチームに合っていると思い、導入を提案しました。すると、即座に採用してくれましたね。

飯野:話を聞いてから、すぐにポチりました(笑)。「Figma」はアメリカでは流行りはじめていたけど、日本での認知度はまだまだ低かった。けれど、長谷川の主張に納得したので、エンジニアたちとも相談し、合理的に判断したんです。「Figma」の導入だけでなく、普段から良い意味で朝令暮改のスピード感で物事が進んでいきますね

「定例ミーティングが5分で終わってしまう」コミュニケーションの絶えない組織体

―AQUIZ事業部のメンバーは、どのような雰囲気で働いているのでしょうか?

飯野:平均年齢が20代後半くらいの若いチームで、たくさん会話しながら働いています。僕たちは「プロダクトファースト」を徹底していて、すべてのメンバーが職種に関係なくプロダクトサイドにもビジネスサイドにも口を出すし、誰の意見であっても合理的なものを採用する。とにかく「プロダクトをホームランにすること」が最優先なんです。

―意思決定はどのように行われているのでしょうか?

飯野:徹底的に話し合い、すべてのメンバーが納得できるようにしています。発言を推奨するカルチャーがあるし、コミュニケーションの総量はかなり多いほうではないでしょうか。定例のミーティングも一週間に30分ほど時間を取っているだけですね。
「定例ミーティングやるぞ!」となっても、みんな知っていることばかりだから5分で終わってしまったり(笑)。まとまって話す時間をとる必要がないくらい、チームの全員が普段から議論しているんです。

森田:全員が近くで作業しており、他の人が話している内容もすべて聞こえてくるので、必要な情報は結果的に常に共有されているんですよね。

長谷川:「Figma」を利用していることも一因かもしれません。リアルタイムですべてのメンバーがデザイン作業の様子を見ることができるため、制作中のデザインについてコメントをもらい、その場で生まれたアイデアについて議論したりしていますね。

―AQUIZ事業部で活躍できる人の特徴を教えてください。

飯野:自分で手を挙げて仕事を拾っていけるマインドセットを持っていることが重要です。言われたことだけをやるのではなく、プロダクトに追加したい機能を自ら提案して周囲を巻き込んでいける人でなければ活躍できません。実際、言われたことだけをやるメンバーは、現状はひとりもいませんね。
プロダクトファーストと言っているくらいなので、評価もプロダクトへの貢献と連携させています。

森田:僕も飯野と同じ考えです。「私はこの領域だけをやります」みたいな人は活躍できない。いま事業部に欠けているピースが何なのかを把握し、自分が担うべき役割を見つけ、そのために足りていないスキルセットを伸ばしていける必要があります。

長谷川:僕も一緒ですね。デザイナーであれば、未経験な領域でもプロダクトに関わるすべてのデザインをこなそうとする気概がほしい。

―最後に、DMM.comやAQUIZ事業部に対して興味を抱いている方に向けて、メッセージをお願いします。

飯野:ゼロからプロダクトをつくれる環境はなかなかないので、とても面白いと思います。ホームランを打つことに貢献できる自信がある人は、ぜひ来てほしいですね。

森田:とにかく素晴らしいプロダクトをつくることだけに集中している環境です。自分が解くべきイシューを見つけ、それに対する解の質を最大限に高めるため、取るべきアクションを考え抜ける人に来てほしいです。

長谷川:「AQUIZ」の世界観は、正直に言ってまだまだ定まっていない状態。デザインの価値を信じ、一緒にプロダクトをつくっていける人に、ぜひ来てほしいですね。

構成:岡島 たくみ(モメンタム・ホース) 編集:小池 真幸(モメンタム・ホース)