✔ コンテンツが好きで、テキスト分野で新しいことに挑戦してみたい人におすすめの記事です

✔ チャット小説サービス「TELLER」を運営するピックアップ社のCEO、蜂谷宣人が登場します

✔ チャット小説の現在の市場規模や未来図に迫ります

テキスト領域に新たな息吹

蜂谷 宣人(はちや のぶと)ピックアップ株式会社 代表取締役社長
2012年に新卒として株式会社ディー・エヌ・エーに入社。2014年にMERYを運営する株式会社ペロリに出向し、新規サービス立ち上げ等に従事した。2017年にミラティブにてプロダクト開発に携わった後、2018年にピックアップ株式会社に入社。TELLER の事業責任者としてプロダクト開発及び収益化に従事。2020年10月よりピックアップ株式会社代表取締役社長に就任。


—— チャット小説サービス「TELLER」は、どのような経緯で誕生したのでしょうか。

蜂谷:「デジタルの力で、日本に新しい文化を作る」をミッションに掲げ、ジャンルレスにモバイルアプリを開発していた弊社ですが、アメリカの『HOOKED』というチャット小説のアプリが急成長していたのをきっかけに、「TELLER」の開発に乗り出しました。

複数のモバイルアプリを運営していますが、現在最も注力しているのが「TELLER」のグロースです。

—— もうすぐリリースから4年目を迎えるとお聞きしました。市場において「TELLER」はどのような立ち位置なのでしょうか。

蜂谷:そもそも日本はチャット小説市場が未熟なのですが、「TELLER」は累計ダウンロード数が600万を達成したところです。毎日1,500~2,000ほどの作品が投稿されるなど、コンテンツも充実してきました。

市場の未来を占う意味では、チャット小説市場が盛り上がっている先進諸国の事例が参考になります。

中国では「快点阅读」が1億ドル、ニューヨークに本社を置く「ラディッシュ」が6320万ドルの資金調達を行っています。

また韓国のオンライン小説市場は、400億円規模の市場になっています。

TAM(Total Addressable Market)換算すると、日本では300億円から800億円の市場になるポテンシャルがあります。現在は、そのタイミングの訪れを虎視眈々と待っている状況です。

モバイルコンテンツ領域は、動画なら「YouTube」、音声なら「Clubhouse」といったように、主要プレーヤーが散見されます。ゲームも有名どころがいくつかありますよね。

しかし、テキスト領域は、まだ穴が開いているのです。ピックアップは「TELLER」を皮切りに、このポジジョンで第一想起されることを狙っています。

トッププレイヤーが参入してくる

—— チャット小説の作品は、どのように提供しているのでしょうか。

蜂谷:自社で作家も抱えてはおりますが、現在は編集メンバーを通じて外部の作家さんに書いていただいた作品が多くなっています。

投稿者には、アニメ『賭ケグルイ』の作家さんなどのプロの方もいますし、初めてチャット小説作品をつくる方もいます。

現在はオリジナル公式作品の作家さんに限定していますが、将来的には、いい作品さえ作れれば、すべての方がセミプロ作家として収益が得られるようなUGCプラットフォームを志向しています。

日本は小説をつくりたいと考えている人、つまり供給側のニーズが非常に高いのですが、収益を得にくい構造になっているため、なかなかヒット作が誕生しません。そうした構造にもテコ入れをしながら、市場を拡大していければと思っています。

—— 書き手視点で、チャット小説のニーズは高まっていくとお考えですか。

蜂谷:確実に高まると思います。芸能人が続々とYouTubeチャンネルを開設するなど、いわゆるトッププレイヤーがモバイル領域(オンライン領域)に参戦する事例が増えています。

テキストでも同じことが起こるはずで、有名作家さんがモバイルに特化した作品を書き下ろす事例が増えていくでしょう。

そうやって裾野が広がれば、チャット小説だけでなく、モバイルUIに特化したテキストコンテンツのバリエーションが増え、クオリティも高くなっていく。

鶏と卵かもしれませんが、ユーザーも増えていくはずなので、現在が過渡期なのではないかと睨んでいます。

—— ユーザー視点ではいかがでしょう。

蜂谷:隙間時間で読めるチャット小説は、忙しい現代人に適したフォーマットです。

数行読み返せば内容を思い出せるので、電車に乗っている時間でも十分に楽しめます。ストレスなく消費できるコンテンツなので、今後ますます広がっていくのではないかと考えています。

編集者が市場をつくる

—— チャット小説サービスが普及した未来には、どんなことが起こりうるのでしょうか。

蜂谷:チャット小説ならではのヒットコンテンツが生まれて、新しいスターが誕生すると思います。

銀幕のスターは高倉健さんでしたが、テレビのスターは明石家さんまさんです。YouTubeだと、ヒカキンさんが人気者ですよね。つまり、プラットフォームが違えば、新たなスターが生まれるわけです。

漫画では『鬼滅の刃』が世間を虜にしましたが、チャット小説がメインストリームになれば、今度は全く新しいスターが誕生する。チャット小説から、『鬼滅の刃』級のヒットコンテンツが誕生してもおかしくないはずなのです。

すると市場はどんどん拡大し、また新たなスターが誕生する流れができていきます。

—— ヒットコンテンツが起爆剤になり市場規模が拡大していくということは、編集者が市場をつくる可能性も考えられますね。

蜂谷:その通りです。例えば、10年ほど前に携帯小説サイトの「エブリスタ」で『王様ゲーム』という作品が世に出て、オンライン小説市場が加速度的に成長しました。

『王様ゲーム』見たさでユーザーが殺到し、その結果多くの作家さんがオンライン小説に参入したのです。

ヒットコンテンツを一つでもつくることができれば、景色はガラッと変わると思います。ですから、市場をつくる気概がある編集者さんがいれば、ぜひ一緒に挑んでいきたいですね。

—— チャット小説からヒットを生み出すために、現在仕掛けていることはありますか。

蜂谷:DMM.comのアニメ事業部と連動して、お互いの持つアセットを活かした協働の可能性を探っています。

「チャット小説のコンテンツを提供して、それがアニメ化されてヒットするというパターンもあるんじゃないか」といった具合です。もちろん、その逆もあると思います。

着実にユーザー数を伸ばしつつ、DMM.comのアセットを活用したコラボレーションをすることによって、飛躍的に成長する可能性がある。

DMM.comグループにいるからこそできる挑戦があるし、実現したい未来に近道で行くこともできるのではないかと思っています。

来たる「チャット小説」大航海時代

—— 現在「TELLER」は、どのようなフェーズにあるのでしょうか。

蜂谷:売上は右肩上がりが続いていて、さらに成長するための戦略を考え、実行に移している段階です。

キーワードは3つあり、1つ目は「オーガニックからのアクセスをいかに増やすか」。2つ目は、「広告のパフォーマンス安定化」で、3つ目は「解約率の改善」です。

特に1つ目は、「市場をつくる」ようなヒットタイトルの創出が大きく寄与すると考えています。そのため、現在コンテンツ体制の強化に注力しています。

—— チャット小説市場をつくりだし、そこでナンバーワンのポジションを確立するために、どのような仲間を募集しているのでしょうか。

蜂谷:エンジニアと編集者を積極的に募集しています。

エンジニアはWebアプリケーションやスマホアプリのAPI開発・運用経験がある方を募集していて、特にtoCサービスをしてきた方が合うと思っています。モバイルアプリは、ユーザー体験を設計するのがすごく大事になるので。

プロダクトマネージャーやUIデザイナーとコミュニケーションを密にとりながら開発・運用を進めていくので、一般的なエンジニア業務よりも広い視野が求められると思います。

編集者に関しては、とにかくコンテンツが好きで、新市場開拓にもワクワクできる人が適任です。ピックアップで編集者として働くということは、まだ存在しない文化をイチからつくるようなものなので。

具体的な業務としては、作家の発掘や企画づくり、そしてそのディレクションをお任せします。

就業中の会話は本当にコンテンツについてがほとんどなので(笑)、ジャンル問わずヒットエンタメコンテンツをチェックしたり、コンテンツが好きで仕方ないという人が続けられると思います。

また、モバイルアプリということもあり、サービスの現状は数値で可視化されます。その数値に応じて、柔軟にPDCAをまわしていける人であれば、たとえ未経験であってもやっていけるかなと思います。

—— 「新しい小説文化を根付かせることにワクワクすること」が条件になりそうですね。ピックアップに興味がある人にとっては、カルチャーも気になるところです。

蜂谷:ITスタートアップ出身者がほとんどなので、独特のネットカルチャーがある気がします。

DMM.comとの関係性でいうと、そこまで文化を共有しているわけではありません。「ピックアップとして事業に本気で取り組み、その上で協力を仰ぐ」というベストな方法で連携しています。

例えばコンテンツの配信に関しては、DMM.comのグループ会社であるAlgoageと協力しています。ちょうど、質の高いレコメンドエンジンが完成したところです。

こういった連携体制のおかげで、メンバー全員がプロダクトづくりに注力できているのだと思います。

あとは、「とりあえずやろう」ではなく、取り組む施策すべてに対して、明確な目的を持って愚直に取り組む雰囲気があります。KPIをみんなで共有していたり、「これはこうしてみたら?」と役職を超えてアドバイスも飛び交うなど、オープンな雰囲気です。

—— これからのチャット小説に興味のある人に、伝えたいことはありますか?

蜂谷:世界では小説のオンライン化が着々と進行しているものの、日本ではまだそのムーブメントが起きていません。

しかし、僕はその波が今後、必ず日本にも来ると思っています。

いつ来るのかは正確に予想できませんが、ピックアップはそのビッグウェーブに乗る準備ができています。

しかし、さらに成長スピードを上げるためには、まだまだ仲間が必要です。これからくるテキストの新しい未来に心が躍る方は、ぜひピックアップの門を叩いてほしいと思います。




 

構成:井上茉優 編集:オバラミツフミ 写真:高山潤也