2020年12月、朝日放送グループホールディングスとDMMによる合弁会社「株式会社ONE DAY DESIGN」の設立が発表されました。シニア向け通販事業を中心に、メディアの新しい価値・進化を目指す同社は、具体的に一体どんな事業を展開しようとしているのか? CEOに就任した高橋寛(朝日放送グループHD)と、取締役COOに就任したDMM・村中の対談から紐解きます。

やりたいのは、単なる通販番組ではない

—— 朝日放送グループHDでの新規事業開発の一貫から、今回の構想は始まったとお聞きしました。元々はどのような背景や目的から、新規事業開発を進めていたのでしょうか?

高橋 寛(たかはし ひろし)
株式会社ONE DAY DESIGN 代表取締役CEO / 朝日放送グループホールディングス株式会社 経営戦略局 部長
新卒で大手通信キャリアに新卒入社。金融・コマース分野の新規事業開発のグループを率いる責任者として推進。戦略の立案から実行、その後のグロースまでを担当。その後、新規事業開発の責任者として大手損害保険会社に転職。モビリティ領域とデジタル保険分野の事業開発に従事し、モビリティ事業の立ち上げと大手デジタルプラットフォーム企業の顧客基盤と保険会社のアセットを組みあわせたデジタル新保険の開発と投入を実行。昨年2月に社長直轄の新規事業開発プロジェクトのリーダーとして、朝日放送グループホールディングス株式会社に入社。本年1月にDMM.comとの合弁会社である株式会社ONE DAY DESIGNの代表取締役に就任。


高橋:今のテレビ局のビジネスモデルは、構造的に限界を迎えつつあると感じていたことが出発点です。媒体別広告費の統計を見ると、インターネットがテレビを上回り、その傾向は加速しています。また、メインの放送事業の他に不動産収入を収益源としているテレビ局は多いですが、それも人口減少の日本において中長期的には期待できません。テレビでも不動産でもない、新しい収益の柱となる事業を考えていくことが、業界としても、また朝日放送グループとしても求められている状況でした。

村中:DMMとの最初の接点は、展示会での商談でしたよね。いろいろとお話を伺う中で、お互いの強みを活かした相乗効果のある組み方ができそうだと感じて、そこからはトントン拍子で話が進みました。


 

—— 具体的にどのような相乗効果が期待できたのでしょうか?

高橋:我々ができるのは、番組をつくり、放送の電波に乗せてマスの視聴者に届けること。そこにDMMさんの持つ、デジタル展開の強さや、3,000万人規模の顧客管理の基盤、多業界のコンテンツホルダーとのネットワークを掛け算することで、エポックメイキングな化学反応が起きるのではと考えました。

村中:テレビには収益構造上の課題はあるかもしれないですけど、一方で揺るがない優位性も感じていました。それは「消費者からの信用力」です。


 

村中 悠介(むらなか ゆうすけ)
株式会社ONE DAY DESIGN 取締役COO / 合同会社DMM.com COO
2002年にDMM.comに入社し、動画配信事業の営業担当を経て、事業責任者を務める。2011年に取締役就任後、アミューズメント事業、アニメーション事業など多岐にわたる事業を立ち上げる。 2017年11月サッカーベルギー1部リーグ シントトロイデンの経営権取得。2019年5月よりDMM GAMES CEOを兼任。現在DMM.comの50以上ある事業を統括する。


村中:インターネットは、良い商品もあれば悪い商品もある有象無象の世界ですけど、テレビは違います。厳しい広告審査の基準もあって「テレビには、悪徳業者の怪しい商品は流れないだろう」という、消費者からの暗黙の信用があります。この信用力は、そう簡単にはインターネットに代替されないでしょう。

高橋:そうですね。生半可なモノはテレビで紹介できないような仕組みになっています(笑)。我々が良い商品をしっかり目利きして、信用力を担保した形でマスにその魅力を届ける。そんなことが実現できればという想いで、今回の合弁事業は始まりました。

村中:今回我々は、単なる通販番組を一緒に作りたいわけではないんです。通販事業という言い方はしてますが、やりたいことはむしろEC事業に近い。ECに繋がる入口の1つとして、テレビの力を活用していきたいと思っています。


 

百貨店のような、信頼とブランドのある場所に

—— CM等ではなく、通販というフォーマットを選んだ狙いは何でしょうか?

高橋:番組枠を活用するので、CMよりも長い尺を使って、丁寧に商品の特徴や魅力を表現できるという点が大きいです。たとえばウェルネス商材など、消費者に正しく理解してもらうのに少し時間がかかるような商材も想定しています。

村中:テレビ通販って、昔から一定数ユーザーがいて歴史は長いですけど、フォーマットとしてはあまりアップデートされていないと感じていて。「1回放送して、売って、終わり」で本当にいいのかな?と。たとえば継続課金の仕組みを取り入れるとか、まだまだ出来ることがたくさんあるはずですよね。

高橋:それは確実にありますね。これまでのテレビの売り方は、通販にしてもCMにしても、単発で流して終わるのが普通でした。でも、これだけサブスクモデルのサービスが世の中に登場してくる中で、テレビの世界でも、サービス提供者と消費者が継続的に繋がっていける仕組みが実装出来るのではないかと思ってます。


 

村中:商品を提供する側も、今はどんどん裾野が拡がっていますよね。OEM市場が成熟してきて、個人であっても、趣味の延長で気軽にモノを作って販売できる時代になりました。

高橋:ただ消費者目線で言うと、提供される商品がたくさんある中で、自分が欲しいモノを見極めるハードルは上がっていると思います。健康食品や美容器具が分かりやすいですが、比較対象が多すぎて何を買っていいのか分からないですよね。

村中:我々がやろうとしていることは、本質的には「百貨店ビジネス」に近いのかなと思ってます。そこに行けばクオリティが担保された良い商品が見つかり、何度も訪れたくなるような場所になってほしい。

高橋:そうですね。しっかり良い商品を揃えること。商品の魅力をテレビの企画でわかりやすく表現すること。1度の購買で終わらず、継続性があること。そういったことを意識しながら、既存の通販番組やECサイトには無い付加価値を出していきたいですね。


 

地方が持続的に発展する仕組みをつくりたい

—— DMMは、地方創生や農業分野でも事業展開してますが、そういった社内の他の事業との連携は見据えていますか?

村中:もちろんです。たとえば、地方の美味しいイチゴ農家さんを番組で上手く取り上げることができても、彼らにECや直販の仕組みがなければ、せっかく増えた需要に応えることができません。そのため、ECの導入や定期購入のメニュー開発など、地道な部分までサポートしていきたいと思ってます。

高橋:テレビ露出によって一度増えた需要をいかに落とさないか、という点もポイントですよね。テレビ業界のこれまでのやり方で言うと、地方の名産やスポットを番組で取り上げても、一過性のブームで終わってしまうことが多かった。放送日の週末は賑わっているかもしれないけど、一ヶ月後には元通りの光景になってしまう。
地方の自治体や事業者にとっては、一時的な広告宣伝はもちろん有り難いんだけれども、もっと中長期的なスパンで、持続的に維持・発展していけるソリューションが必要になっていると思います。

村中:地方の魅力発信、課題解決にも積極的にコミットしていきたいですね。

高橋:はい。今、ECサイトで良い商品を売っている人。まだECを使いこなせてないけど、良い商品を作っている人。良い商品を買いたいけど、ECを使い慣れていない人。 すべての人にとって「あってよかった!」と思える、テレビ×ECの新しい購買体験をつくっていきたいと思います!


 

構成:柴崎 研 写真:高山 潤也