DMM.comにジョインした代表たちに“ここだけの話”を聞く連載シリーズ「DMM式M&A」。今回は、2019年9月に仲間入りした農業スタートアップ・ファーマリーの石泰成さん(代表取締役社長)貝﨑敬一さん(取締役副社長)にインタビューしました。

家族解散、家業倒産……。創業者のお二人に共通するのは、商売に興味を持つきっかけとなった「貧乏暮しの過去」。創業までの経緯からグループインの理由、今後の展望まで詳しくお話を伺いました。

雑草根性を生んだ、貧乏暮しの過去

—— ファーマリーは、石さんと貝﨑さんによる共同創業だとお伺いしています。まずは、起業の経緯について教えてください。

石 泰成(せき てそん)株式会社ファーマリー 代表取締役社長
関西学院大学卒業、同年に(株)リクルートホールディングス に入社。中途事業本部にて、中途採用コンサルティングに従事。2017年より(株)ジラフにて営業、事業開発、POを担当。2018年4月にファーマリーを創業、2019年さらなる事業拡大のためDMM.comへジョイン。


石:もともと商売に興味があったことが、起業の原点です。実家が飲食店を経営していたのですが、あまり経営がうまくいかず、開業と廃業を繰り返していました。そうした様子を間近で見ていたので、商売に関する関心が強く、物心がついた頃には「いつか自分も商売人になるだろうと」と思っていましたね。

貝﨑 敬一(かいざき けいいち)株式会社ファーマリー 取締役副社長
京都大学大学院卒業、(株)リクルートホールディングスに入社し、新卒事業本部に配属。2017年より自動車事業本部事業開発グループにて事業開発に従事。2017年より(株)Azoopに参画。事業開発責任者として中古トラックのWEB流通事業の立ち上げに従事。2018年4月にファーマリーを共同創業し、現在に至る。


貝﨑:僕も石と同様に、家業がうまくいかなかった過去があります。父親が農業を営む傍でいくつか事業を営んでいたのですが、見事に全部失敗してしまい……。玄関に“差し押さえの札”が貼られていたこともあります。親が「家族解散」を言い渡す、さながら『ホームレス中学生』のような日々を過ごしました。
そうした経験があったので、「僕の代でなんとかしないと」という強い思いはありました。ネガティブに捉えているわけではありませんが、自ずとハングリー精神が育ちましたね。


 

—— どうして、“共同創業”というスタイルをとったのでしょうか。

石:僕らはリクルートの同期で、配属先も一緒。それほど親しかった訳ではありませんが、お互いのことを知っていました。似たような境遇を持っていたので、そこまで会話をしなくとも、シンパシーは感じていたんです。

ただ、一緒に創業することになったのは偶然です。僕がリクルートを退職し、個人事業主としてファーマリーの前身となる事業を営んでいたところに、興味を持った貝﨑が連絡をくれました。

彼も当時、すでにリクルートを退職していて、実はファーマーリーの事業と近い領域で仕事をしていたんです。境遇の一致、事業ドメインへの関心の一致、商売への興味の一致。それぞれの要素が重なり、一緒に会社を立ち上げることにしました。

—— 事業を立ち上げるにあたり、農業という領域を選んだ理由についても教えてください。

石:興味を持っていた業界に、大きなペインを見つけたからです。

僕の実家は食肉を仕入れていたので、一次産業の値動きが激しいことを知っていました。そこに、商売としての面白さを感じていたんです。中でも農業というマーケットを選んだのは、複雑怪奇な流通構造に改善の余地があったから。テコ入れすることで、業界が良くなっていく未来が明確に見えていました。

貝﨑:僕の実家も米農家を営んでいたので、石と同様に一次産業への興味がありました。またリクルートを退職してファーマリーを創業する間に、一度運送業界で仕事をしたことがあります。中古トラックのWEB流通事業の立ち上げに従事し、機器の取引に商売としての魅了を感じたんです。

石はすでに販売実績がありましたが、「本当にビジネスとして成功するのか?」を数ヶ月かけて検証した上で、合流。ともに、ファーマリーを創業しました。

農家の困りごとの解決を目指して

—— 「テコ入れすることで、業界が良くなっていく未来が明確に見えた」とのことでしたが、その未来を実現するために、どのような戦略を敷いていたのでしょうか。

石:会社を登記してまもなく、VCから資金調達をしていたこともあり、当初は明確にIPOを意識していました。ただ、「資金調達を続けてIPOを目指すやり方では、スピードに欠ける」と気づき、M&Aを意識するようになっています。

僕たちのビジネスモデルは、全国の農家から中古農機を購入し、それを他の農家に卸すもの。つまり、利益を上げるには在庫を持つ必要がある“先行投資ありき”のモデルです。資金力がなければ、スケールするまでに時間がかかってしまいます。

時間をかけて成長することも可能でしたが、その間に大資本を持つ競合が参入してしまったら、勝ち目がない。VCからの調達を進めつつ、資金力を持つ企業とM&Aする可能性を探っていました。


 

—— グループインする前から、M&Aを検討されていたんですね。DMM.comとは、どのようにして出会ったのでしょうか。

貝﨑:VCからの資金調達について話がまとまりつつあった矢先、共通の知人を介して、会長室の方と食事をする機会がありました。その際に事業について話したところ、M&Aに興味を持っていただいたんです。

その後、亀山会長をご紹介いただいてからはトントン拍子で話が進みました。エクイティでの資金調達を進める一方、「事業が最もスケールする座組みを選ぶ」ことは常に意識していて、DMM.comへのグループインがそれに当たる選択肢だったんです。


 

—— なぜDMM.comへのグループインが「事業が最もスケールする座組み」だと感じたのか、具体的にお伺いさせてください。

貝﨑:スピーディーに市場を取りきる必要があったので、意思決定が早く、なおかつ資金力に長けているDMM.comは、僕たちにとって理想的なパートナーでした。

また、経営陣の考え方が一貫している点にも心を動かされました。DMM.comは、会長を筆頭に商売に対して熱心で、数字に厳しい。彼らと一緒に事業をつくっていけることに、大きな魅力を感じました。


 

—— DMM.comの子会社として、51%の株式譲渡というスタートです。そこにはどんな想いがありましたか?

石:僕たちにとっては、描いた未来が実現できるかどうかが重要でした。VCとの間で資金調達が進んでいることも素直にお伝えしていましたし、金額の交渉も基本的にはしていません。当時も今も、農業領域にある課題を一つでも多く、スピーディーに解決することだけを考えています。

農家に関わる人すべてに

—— 事業の成長を最優先に掲げ、意思決定をされたんですね。グループイン後、憶測どおり事業が成長していますか?

石:そうですね。特に営業活動のスピード感が大きく変化しています。以前は取引先のメーカーと信頼関係を築くまでに多くの時間がかかっていましたが、現在はDMM.comが持つ信用力によって、短期間でシェアを広げられています。

また事業以上に、私たち自身が経営者として成長している感覚があります。亀山会長や取締役に就任していただいた村中さん(村中悠介)からのアドバイスもあり、思考の制限が解除されている。これまでと違い「グループインしたからこそ」の戦い方を考えられるようになり、視座も大きく変化したと思います。


 

—— グループインを経て、現在はどのような事業戦略を描かれているのでしょうか?

貝崎:まずは農業領域で垂直的に事業を展開し、そこで得たアセットを水平展開していければと考えています。たとえば、農業機械からの展開で、次は船舶のエンジンを取り扱うなど。高単価のBtoB商材に張り、リユース領域で事業を伸ばしていきたいと考えています。

石:農業領域での関わりを深めていく施策として、リアルな拠点を展開していく予定です。レガシーな領域のIT化に向け投資をしていきますが、農業従事者は高齢の方が多く、信頼関係をつくっていくにはアナログな拠点が不可欠。現在は京都にある提携店に加え、九州と東北に新たな拠点を準備中です。

中古農機を欲している農家さんは全国にたくさんいらっしゃいますが、ニーズに答えられる良質なサービスはまだまだ少ないですし、そもそも認知もされていないのが現状です。農家さんとの接点が増えるたびに、提供できる価値が増えていく実感があるので、泥臭くもスピーディに拠点を増やしていければと思っています。


 

—— 拠点の構築以外に、農家さんとの信頼関係を築くために、どのような工夫をされているのでしょうか。

貝崎:農家というビジネスモデルを知り、農家さんに寄り添うことを大事にしています。農家さんって、とてつもなくボラティリティの高いビジネスなんです。天候不順など、常に収入が断たれてしまうリスクを背負っていますし、天災で一瞬にして破産に追い込まれてしまうこともある。

おこがましいかもしれませんが、僕たちは全国の農家さんの生活を支えたいとも思っているんです。ITにバックグランドのあるDMMグループの力を活かし、新しい仕組みで農業に透明性をもたらし、健全に農業に打ち込める環境をつくっていきたい。その想いを持って事業に取り組むことこそが、最も大事なことだと思っています。

 

構成:オバラ ミツフミ(モメンタム・ホース) 写真:清水 舞