DMM.comは2018年10月、テックカンパニー化を推進すべく「DMM Tech Vision」(以下、Tech Vision)を打ち出しました。連載「DMM Tech Visionの現在地」と題して、第4回目以降はDMM Tech Visionを実現するための部署を紹介。テックカンパニー化の現在地を探っていきます。

第5回は、2020年に立ち上がった新組織「QA部」の川上琢也が登場。“失敗し続けられる組織”の実現に向け、サービスの品質と組織のアジリティ向上に向けた取り組みを語っていただきました。

技術者の喜びを知ったQAという仕事

—— まずは、川上さんの現在に至るキャリアをお伺いします。

川上 琢也(かわかみ たくや)テクノロジー本部 QA部 部長
ソフトウェアエンジニアからQAエンジニアへキャリアチェンジし、ITベンチャーやスタートアップ企業にて品質保証組織の立ち上げを経験した後、2019年9月にDMM.comに入社。2020年3月にDMMグループ横断の品質保証組織をゼロから立ち上げ、現在はQA部の責任者を務める。


川上:大学を卒業後、ソフトウェア・エンジニアとして社会人キャリアをスタートしました。現在に至るキャリアの原点になったのは、スマートフォンアプリの開発者として、メガベンチャー企業に転職したことです。

当時はスマートフォンが私たちの手に渡り始めた、言うなれば“スマホの黎明期”です。アプリ開発のいろはがなく、品質に問題を抱えたプロダクトが世に溢れている時期でした。すぐに落ちるし、挙動が重い。「黎明期だから仕方ない」という風潮が、少なからずあったと思います。

しかし私は、技術者としてどうしても許すことができませんでした。そこで、せめて自社がリリースするサービスは品質にこだわろうと、質向上に向けた取り組みをタスクフォースとして開始したんです。


 

—— 現在の仕事に通ずる経験をされたんですね。

川上:当時は「QA部」なるものが存在することを知らなかったんですけどね。やがてその活動は全社的に好評をいただき、やがて全社横断の組織として「QA部」が発足することになりました。

最初は一人で立ち上げた組織ですが、会社の成長に比例して拡大し、最終的にはグループ会社の品質管理も任せていただくようになりました。偶然形成されたキャリアでしたが、やりがいも大きかったです。


 

—— 具体的に、QA部のどのような仕事にやりがいを感じていたのでしょうか。

川上:自分の手がけた仕事によって、アプリストアに寄せられていたネガティブなコメントが減っていき、評価が上がっていく様を直接見られた点です。自分の仕事を通じてサービスへの評価が向上していく様子は、技術者としてこの上ない喜びでした。


 

クオリティとスピードの両立を目指す

—— DMM.comに転職されたきっかけについても、お聞かせください。

川上:DMM.comに入社する以前に、一度ヘルスケア領域のスタートアップを挟んでいます。QA部を立ち上げたメガベンチャーは、品質を追求する風土が全社に馴染み、事業部ごとにクオリティの高いサービスを開発できるようになったので、「QA部としての役割を果たすことができた」と考え転職したんです

転職したスタートアップでは、スピード感を持ってプロダクトの機能追加をしていた分、毎日のようにインシデントが発生していました。事業部のメンバーだけでなく、役員を含めた社員総出でテストをしている状態です。

過去の経験を活かせる環境だと思いましたし、代表の強い想いにも惹かれ、再びQA部を立ち上げることにしました。しかし、「自分の役割を最大限に発揮できなかった」というのが正直なところです。


 

—— なぜ、役割を果たすことができなかったのでしょうか。

川上:スタートアップ企業では、デリバリーの速さを最大の価値と捉えるのが一般的です。しかしスピードを最優先に置き、エンジニアリソースを投下した結果、品質が追いつかず不具合を流出してしまったのです。

デリバリー速度に並走できる品質を常に提供し続けるためには、テクノロジーをフルに活用しなければいけないという教訓を得ました。従来のやり方では、ダメだと。そのタイミングで、より自分が目指す世界を実現できる環境を求めて転職活動をはじめました。


 

—— そうして出会ったのが、DMM.comであると。

川上:おっしゃる通りです。オープンポジションの求人に応募したところ、CTOの松本さん(合同会社DMM.com CTO:松本勇気)とお話する機会をいただきました。松本さんは私のやりたいことに興味を示してくださいましたし、僕も彼が掲げるTech Visonに強く共感しました。

DMM.comは、売上規模で見れば大企業です。しかし、スタートアップの気質を持っています。また非上場という特性上、投資家の意向に左右されることなく、自らの意思で舵取りができる。

新規事業がどんどん立ち上がる会社でもあるので、これまでのキャリアで感じたやりがいや楽しさを維持しつつ、違和感を持って仕事をしなくていいという安心から、入社を決めています。


 

組織のAGILITYを高める役割

—— DMM.comでは、どのようにしてQA部を立ち上げたのでしょうか。

川上:入社して半年が経った2020年の3月に、マネージャー経験を持つメンバーを招いて部署を立ち上げました。QA部としての最初の仕事は、動画配信事業のクオリティ改善です。

事業規模が一番大きく、また歴史のあるサービスだったため、他の事業と比較して技術的負債が多くありました。今のところ問題なくサービスを提供できていても、5年後、10年後には少なからず問題が出てきそうだったので、まずは改善点の洗い出しからスタートしています。


 

—— QA部の立ち上げから半年以上が経ち、どのような変化がありましたか。

川上:課題の洗い出しを丁寧に行い、品質管理の基準をつくったことで、徐々にサービスの質が向上しています。今ではテストの自動化を推進しており、確認項目が膨大で目視だけでは行き届かない変化にも着手できる状態をつくることができました。リリース速度も向上しています。

また副次的な効果として、サービつの開発者たちが本質に対して強い責任を持つようになりました。「品質管理はQA部の仕事」と割り切るのではなく、一緒にサービスを開発していく文化が少しずつ醸成されているのではないかと思います。


 

—— テックカンパニー化に向けて欠かせない組織だと思いますが、具体的にどのような貢献をしていくのでしょうか。

川上:AGILITY(敏捷性)のある組織開発に、大きく貢献できると思っています。

新しい機能をスピード感を持ってリリースすることには、大きな価値があります。しかしその反面、リスクもある。

しかしQA部が品質に目を光らせていれば、リリースする前にバグを察知し、ユーザーにいつも万全の状態でサービスを提供できるようになります。つまり、思い切り失敗できる組織になっていくということです。

品質管理を勘と経験だけで行うのには無理がありますから、データを駆使して精度を高め、テックカンパニーたるAGILITYの強化に力を入れていきます


 

あらゆる事業に触れるDMMの面白さ

—— これまでもQA部を立ち上げた経験を持つ川上さんから見て、DMM.comならではの面白さはありますか?

川上:あらゆるドメインでサービスを提供しているのは、DMM.comならではの面白さだと思います。現在はECデジタル事業を中心に改善を行なっていますが、やがてDMM.com全体の品質向上に取り組むフェーズになれば、世の中にある事業領域のほとんどを網羅できるのではないかとワクワクしますね。

これまでもQA組織を立ち上げてきましたが、今が一番学びあるキャリアになっているのではないでしょうか。


 

—— これからQA部は、どのような点に力を入れていくのでしょうか。

川上:現在は、部署の立ち上げ当初に期待していた「当たり前の品質」を実現できたフェーズです。これからは、“儲かるサービスの品質”を目指していかなければならないと思っています。

そのために、組織も拡大中です。最初は二人三脚でスタートしましたが、現在は創業の地である金沢事業所にもQA組織が誕生していて、社内公募を通じた部署異動も行なっています。金沢事業所は「北陸No.1テックカンパニー」を目指しており、技術力をメキメキ磨いている段階です。

IT企業を見渡すと、スタートアップやメガベンチャーを中心に、興味深い技術組織が立ち上がっています。私はそれに勝る技術組織を、金沢のメンバーとつくりたいと思っているんです。

風紀委員的な品質管理部門ではなく、事業部とタッグを組んで売上を創り出す管理部門が、DMM.comのQA部。持っている技術を、私たちの掲げる未来に懸けてくれる仲間を募集しているので、少しでも興味が湧いたら、ぜひ門を叩いてほしいです。

 

構成:古川 遥 編集:オバラ ミツフミ 写真:高橋 団