DMM.comは2018年10月、テックカンパニー化を推進すべく「DMM Tech Vision」(以下、Tech Vision)を打ち出しました。連載「DMM Tech Visionの現在地」では、Tech Visionの発起人であるCTO・松本勇気が、社内のキーパーソンと対談。テックカンパニー化の現在地を探っていきます。

第4回は、松本直下の部署であり、全社横断で技術的支援を行うCTO室の村田篤紀と菅原史法が登場。DMM.comの技術的アセットをフル活用して事業推進に取り組む日常と、DMM Tech Vision発表以降の変化について話を聞きました。

テックカンパニー化の肝心要

— DMM.comのCTO室は、どのようなことをする部署なのでしょうか…??

村田 篤紀(むらた あつのり)テクノロジー本部 CTO室長
石川県出身 学生時代の専門はソフトウェア工学。 地方の放送局のシステム開発会社にはじまり、OSSの開発メンテナンスを主とする会社、通信キャリア・ISPを経て、石川にUターン目的でDMM.comの前身であるDooGAにネットワークエンジニアとして入社。その後他社にてデータセンタインフラエンジニア・CTOをしていたが、2014年から再びDMMに合流。


村田:簡単に言えば、CTOの想いを実現させる部署です。CTOに松本が就任した後、弊社ではDMM Tech Visionを発表しています。私たちがやるべきことは、その実現です。そのために、現在は3つのチームに分かれて活動をしています。

まずは、制度設計やブランディングを担当するエバンジェリストチーム。技術のスペシャリストで結成されたチームで、人事と接点を持ちながらエンジニアのスキルアップを支援したり、技術広報をしたりと、対外的な活動も行います。

そのほかに、事業支援チームと技術支援チームがあります。事業支援チームは、読んで字のごとく事業部に対して技術的な側面から事業支援を行う組織です。コードを書くなど実務的なサポートもしますが、事業成長に貢献することをミッションに置いており、組織開発からシステム開発までなんでもこなします。

技術支援チームの役割は、社内エンジニア向けの共有ツールを開発したり、自社運用していたシステムのクラウド化を推進したり、全社単位での技術支援を行うことです。基本的にはこの3チームが力を合わせ、DMM.comのテックカンパニー化を推進しています。



 

—— エバンジェリストチームは「技術のスペシャリストで結成されている」ということですが、それ以外のチームは、事業に対しての理解がないと務まらないように感じます。

菅原 史法(すがわら ふみのり)合同会社DMM.com テクノロジー本部 CTO室
会社経営や動画メディアを扱うスタートアップ企業でのサービス開発経験を経て、2019年9月にDMM.comに入社。現在は、CTO室にて新規事業の立ち上げやM&Aでジョインした企業のグロースに携わる。


菅原:おっしゃる通りです。事業推進がミッションなので、技術力が高いだけでは務まらず、事業側と同じ視座で会話ができないといけません。私は業務推進チームに所属しているのですが、ただ支援をしているのではなく、事業部の中の人としてグロースまでの責任を負う覚悟でかかわりを持っています。

たとえば、私が最初に担当したインフラトップ。同社はM&Aでジョインした会社なので、DMM.comが持つノウハウを共有しながら、同社のCTOになったつもりで泥臭く手と頭を動かしていました。

DMM Tech Visonを浸透させることも役割の一つなので、インフラトップの開発組織に最も合う形に落とし込んで繰り返し説明し、メンバー全員に「自分ごと」として捉えてもらうこともしてきました。

「サポートではなくコミット」がDMM式

—— 事業推進だけでなく、DMM Tech Visionの浸透も担っているんですね。事業部や子会社のサポートをする際に心がけているポイントはありますか?

村田:支援先から“外部コンサルタント”のように思われてしまわないよう、事業部にコミットすることを徹底しています。本音で意見を交わし、メンバーとして受け入れてもらえないことには、ミッションを果たすことができないからです。

菅原:何か提案をする際も「CTO室としてこう思う」といった姿勢は取りません。事業責任者のスタンスで考え、提案し、実行する。その繰り返しで信頼関係を構築し、事業のグロースにコミットするんです。

村田:メンバーには「もし事業部が魅力的に映ったら、無理に戻ってこなくてもいいよ」と伝えています。信頼を勝ち取って「残ってほしい」と言われたら、それは存在価値を十分に発揮した証拠なので。支援先となる事業部にも、「どうぞ口説いてください」と伝えています。


 

—— 規模の大きな企業の横断組織に所属しながら、ベンチャー企業や一つの事業にコミットするのは、エンジニアとして稀有なキャリアにも感じます。

菅原:メリットにあふれたキャリアだと思います。AIから農業まで幅広い事業を展開する会社なので、産業構造の違いに触れられますし、事業推進の方法にもさまざまなバリエーションがあることを知れるのが特徴的です。

私は過去に起業したり、スタートアップで働いたりした経験がありますが、DMM.comに所属してからキャリアが一気に深まったと感じていますね。

村田:「開発だけしていればいい」というわけではないので、事業開発やファシリテーションなど新しい職能が身につくのも特徴だと思います。また菅原が言っていたように、DMM Tech Visonを浸透させることも重要な役割です。ですから伝える力が必要ですし、ときに結果で示すことも求められます。

CTO室でのキャリアは、気持ちのいい背伸びをしながら、技術者としての幅を広げられる機会になるのではないでしょうか。

当たり前を作り続ける技術者に

—— CTO室の歴史についてもお話を聞かせてください。CTO室はDMM Tech Visionが設定される以前から設置されていたそうですが、どのような変遷を辿られてきたのでしょうか。

村田:CTO室の前に、過去について述べさせてください。DMMの開発組織は事業部とは別会社であり横断組織として対応していました。それゆえ事業部と受発注の関係になってしまい、事業推進に貢献できなかった過去があります。そこで会社の統合時に縦型の組織になったのですが、今度は他事業部でのノウハウ共有や成果物共有がやりづらくなってしまいました。こうした過去の苦い経験から学び、再び全社をまたぐ横断組織がいくつか復活しており、CTO室もその中の一つです。

DMM Tech Visionが設定されたことで、事業部と受発注の関係になってしまう問題は解消されました。エンジニアが、自分たちがすべきことは開発ではなく事業成長への貢献だということを明確に理解したからです。松本が来る前は、R&Dや技術支援などをメインとしておりましたが、Visionの明示によって、人事制度(採用含む)や事業支援も必要と考え、CTO室の活動範囲として新たに組織化して来ました。

DMM Tech Visionはいわば、DMM.comの哲学を技術者の視点で解釈したもの。松本によって明確に言語化されたことで、「DMM Tech Visionに従って行動すれば、DMM.comの成長に寄与する」という認識が、全社のエンジニアに行き渡りました。事業部との共通言語ができたことで数字で語り合う文化ができつつありますし、テックカンパニーへと向かう足並みが揃ってきたと感じています。

菅原:事業に理解のある技術者が、事業立ち上げの中枢として参画することが当たり前になり、CTO室にノウハウが貯まり始めています。また過去に溜めてしまった負債をなくす動きもすすめていて、テックカンパニーとしての歩みを進められるのが現在のタイミングです。松本が描いたテックカンパニー化の実現に向け、恐れずチャレンジできるようになったと思います。


 

—— 今後CTO室は、DMM.comの成長、そしてテックカンパニー化に、どのようにして貢献していくのでしょうか。

村田:地道に思えるかもしれませんが、私たちがやるべきことは、40以上ある事業部を技術の力で躍進させていくことだと思います。既に支援した事業部から吸収したノウハウを積極的に還元し、その経験からまた新たなノウハウを得ていく。その繰り返しで他社にはないアセットを築いていけば、自ずとテックカンパニーとしての基盤が整ってくるはずです。

菅原:DMM Tech Visionでは、「当たり前を作り続ける」という目標を掲げています。つまり、終わりのない挑戦です。

しかし、この途方もないチャレンジを繰り返していけば、技術に精通した私たちCTO室が起点となり、DMM.comの次の柱となる事業が生まれる可能性も十分にあると思います。今はまさに種を撒いている段階なので、ここでアクセルを緩めることなく責任を全うしていきたいです。

村田:これだけ大きな規模の会社で、事業を生み出し、事業を推進する技術者としてのキャリアを描ける会社は、そう多くないと思います。新しいチャレンジを模索しているエンジニアの方は、ぜひ弊社の門を叩いてほしいです。

 

構成=オバラ ミツフミ 写真:高山 潤也