DMM.comは2018年10月、テックカンパニー化を推進すべく「DMM Tech Vision」(以下、Tech Vision)を打ち出しました。連載「DMM Tech Visionの現在地」では、Tech Visionの発起人であるCTO・松本勇気が、社内のキーパソンと対談。テックカンパニー化の現在地を探っていきます。第2回は、社歴17年とDMMをよく知る組織管理本部の清水勇人が登場。対談を通じ、2020年2月より松本が組織管理本部を管轄して以来、組織がどのように変化しているのかを紐解いていきます。

ウェットな仕事を、データで強化

—— まずは副本部長の清水さんに、組織管理本部の構成についてお伺いします。

清水 勇人(しみず はやと) 亀チョク本部長 / 組織管理副本部長
2004年に合同会社 DMM.comの前身である株式会社ドーガにWEBディレクターとして入社。様々なプロジェクトを担当した後、マルチデバイス事業部長としてテレビを主とした動画配信事業に携わる。再度、WEBディレクターの管轄役員を担当した後現在は亀チョク開発部の本部長ならびに組織管理本部副本部長を兼任


清水:組織管理本部は、人事部と総務部、情報システム部、経営管理室、あとは障がい者雇用をサポートするビジネスクリエーション部の5部門から構成されています。それぞれ機能は異なりますが、ヒトとモノを中心に、経営資源の見える化と活用支援が主たる役割です。


 

—— 松本さんは2020年2月より、CTO(Chief Technology Officer)でありながら、組織管理本部を掌握されているそうですね。その背景について、教えてください。

松本 勇気 (まつもと ゆうき) 最高技術責任者(CTO)
2018年10月11日より合同会社 DMM.com CTO(最高技術責任者)に就任。
2018年8月まで株式会社Gunosyにて執行役員 CTOおよび新規事業開発室室長。
Gunosy創業直後に入社。これまでニュース配信サービス「グノシー」「ニュースパス」などの立ち上げから規模拡大、また広告配信における機械学習アルゴリズムやアーキテクチャ設計を担当し、幅広い領域の開発を手がける。新規事業開発室担当として、ブロックチェーンやVR/ARといった各種技術の調査・開発を行う。2019年5月よりDMM GAMES CTOを兼任。


松本:僕のDMM.comにおける役割が、テクノロジーという観点をベースにしつつも、あくまで会社を経営することだからです。肩書きはCTOですが、ラベルに過ぎないと思っています。

経営をする上で、僕は「事業パフォーマンスの最大化」を常に念頭に置いています。事業部の人に、できる限り事業に集中してほしいんです。そうした想いから、組織管理本部を管轄するに至っています。


 

—— CTOだからこそできる、組織管理へのかかわりかたはありますか。

松本:大きく二つあると思っています。一つはやはり、データの活用です。特に人事はウェットな世界ですが、数字やファクトをベースに議論することで、ロジカルに意思決定できるようにしていきたいと思っています。意思決定の精度が向上すれば、よりクリエイティブな領域に集中して仕事ができるので、パフォーマンスの最大化に寄与するはずです。

二つ目は、データの活用に必要なソフトウェアを整備すること。組織体制の設計と合わせてシステムの設計も行うことで、一人ひとりの生産性向上を目指しています。


 

—— ウェットなイメージのある人事領域に、データの観点を持ち込む上で、注意した点はありますか?

松本:人と人の関係に対する領域なので、大前提としてウェットであるべきだと思っています。それを踏まえた上で、データ活用することを意識してきました。

組織に課題があるのはつきもので、それらすべてを同時に解決するのは難しい。であれば、何にフォーカスすべきなのかをデータで見える化し、最も取り組むべき課題を明確にするんです。

そもそもシステムの仕事は、人間が持っているリソースを最大限発揮させること。データをベースに正確に意思決定を行いながら、人が介入すべきウェットな領域で、誰もがパフォーマンスを最大化できるよう尽力しています。

バックオフィスが強いと、事業も強い

—— 松本さんが人事総務領域にかかわることで、何か変化が起きていると感じますか?

清水:「役割が明確化したな」と感じています。ここ数年は目の前の課題に向き合うことが多く、ミッション・ドリブンな組織ではなかったと思います。しかし現在は、テックカンパニー化という一つのミッションに向けた動きができはじめている。

こうした動きができるのは、経営に携わる松本さんがトップを務めているからです。「経営資源の見える化と活用支援」という、我々がやるべきことの効果も最大化されつつあります。

松本:僕は組織管理本部を「事業部のパフォーマンスが最大化される道具を提供するチーム」だと思っています。道具をたくさん揃えておき、使いやすいものを自由にピックアップしてもらうイメージです。

4,000人も社員がいるので、一人当たりの作業時間が数分短縮されるだけで、組織あたりの生産性は格段に向上します。


 

—— 具体的なアクションとしては、どのような動きがあるのでしょうか。

松本:特に強く進めてきたのが経営管理です。上記のイメージの第一弾として、それぞれの事業部が最も重要な課題に集中できるよう、フォーカスすべきポイントを明確にするためのモニタリングフォーマットをつくりました。

ベースとなるフォーマットがあれば、あとは各々が、何に注目すべきか理解し、それらに対して数字に基づいて自ら改善を重ねられるようになる。まだまだアナログですが、いずれはより精度の高い仕組みにしていければと思っています。


 

日本で一番面白い働き方を目指して

—— 現在は経営管理のテコ入れに注力されているとのことですが、ゆくゆくはヒトの領域にも手を打たれていくと思います。展望はありますか?

松本:「多様性の受け入れ」が重要だと思っています。「何でもあり」なDMM.comは、事業に多様性がある会社です。きっと数年前は、消防車の開発をしているとは誰も想像できなかったでしょう。そうした多様性を、今度は人と働き方にも受け入れていきます。

たとえば「全員一律にリモートワークにします」といった話ではなく、社員全員がそれぞれ自分の意思で、どこでどう働くかを選べるようにする。すると、さまざまな国と地域から採用でき、ともに仕事ができるようになります。

現在、亀山会長と「日本で一番面白い働き方ができる会社にしてもいいんじゃない?」と話しているところです。事業のみならず「何でもあり」な会社をつくっていきたいと思っています。


 

清水:2019年5月より、在籍する正社員・契約社員約1,000人を対象にフレックスタイム制を導入しておりましたが、コロナ・ウィルスをきっかけにリモート体制を整えるなど、労働環境の見直しはすでに進みつつあります。早ければ今年中にも、松本さんがおっしゃった「働き方に多様性をつくる動き」の第一歩が踏み出せそうです。

もちろん実行する過程で課題は出てくると思います。ですから、到達点を決めてそこへ向かうのではなく、常に改善を続けていければと思っています。

“カオスで効率的”な唯一無二の組織

—— テックカンパニー化を推進する上で、組織管理本部が強化されていくことには、どのような意味があるのでしょうか。

松本:僕にとって、組織とソフトウェアと事業は一体的な存在です。組織も含めて一つのプロダクトであり、それをいかに設計するかが事業のスケーラビリティに大きな影響を与えます。つまり、人事組織の設計とテックカンパニー化は、切っても切り離せない関係にある。組織とソフトウェアを同時に設計することで、よりよい組織が実現できるんです。


 

—— 今後、組織管理本部をどのような組織にしていくか、展望を教えてください。

松本:「事業づくりの土台」として機能する組織にするつもりです。

私たちが目指すべき一つの姿は、スタートアップより、面白い組織だと思っています。すでにスタートアップライクに事業が立ち上がる環境なので、事業をつくる人が事業に集中できるOSができれば、“カオスの極みだけれど、非常に効率的な組織”になれる。その状態は、僕が考えるスタートアップよりも面白い組織です。

そのためにはまず、組織管理という兵站を担う部門が、ソフトウェアを有効活用していく必要がある。テクノロジーをうまく活用しながら、全社の成長とテックカンパニー化を牽引していきます。


 

清水:管理部門と聞くと、何となく保守的なイメージを持たれてしまいます。しかし松本さんの話からも伺い知れるように、DMM.comの管理部門は積極的です。僕が副本部長に就任してからもそうですが、松本さんが組織管理本部を管轄するようになってから、組織のスピード感も早くなってきました。

気がついたら事業部が増えているようなカオスな会社ですから、バックオフィスが洗練された組織でないと、会社の成長を後押しすることはできない。その自覚を持ち、テックカンパニー化、そして「スタートアップより面白い」独自の組織へと導いていければと思っています。

 

文:オバラ ミツフミ(モメンタム・ホース) 写真:つるたま