DMM.comは2018年10月、テックカンパニー化を推進すべく「DMM Tech Vision」(以下、Tech Vision)を打ち出しました。連載「DMM Tech Visionの現在地」では、Tech Visionの発起人であるCTO・松本勇気が、社内のキーパソンと対談。テックカンパニー化の現在地を探っていきます。 第1回は、松本と二人三脚でテックカンパニー化を推進してきた、ITインフラ本部の大久保寛が登場。「土壌は整った」というTech Visionの進捗から、DMM.comでは「技術力しかないエンジニアでは不十分」な理由まで、組織づくりの裏側を明かしてもらいました。

二人三脚でテックカンパニー化を推進

—— 大久保さんは、Tech Visionの発表と同時期にDMM.comにジョインされたのですよね。

大久保 寛(おおくぼ ひろし) ITインフラ本部
新卒でSIerに6年勤務。その後、2005年にカカクコムへ入社し、約12年の在籍期間でエンジニアとして同社が運営するサービスをほぼ経験、事業責任者や子会社CTOを歴任。その後、メディア系ベンチャーにてCTOとCFOを兼務。2019年より合同会社DMMに参画。


大久保:はい。2018年秋、全社の技術部門を統括するVPoE(Vice President of Engineer、技術マネジメント責任者)としてオファーをいただきました。

松本:大久保さんと初めて会ったときは、「どんな課題であっても、泥臭く解決してくださりそうな方だな」という印象を抱きました。ですから、VPoEとは言いつつ、僕と二人三脚でTech Visionを推し進めていただく役割を期待していましたね。 実際に働きはじめても、思った以上に「なんでもできる」方で、驚いています。最近はセキュリティ部長も兼任してくれていますし。


 

—— 「なんでもできる」能力は、どのように身に着けてこられたのでしょうか。

大久保:意識して身につけたというより、ハードな状況を乗り越えていく過程で、自然と身についていった感覚です。DMM.comにジョインする前、カカクコムの子会社やスタートアップでCTOを務めていたとき、実装からマネジメントまで担わざるを得ない状況でしたから。
あと、もともと「自分が一番良いコードを書ける」と思い込んでいたのですが、その自信が打ち砕かれたことも大きかったです。「どう頑張ってもこの人にはかなわないな」と思わされる優秀なエンジニアと出会っていくなかで、自分がコードを書くのではなく、そうした人たちに最大限活躍してもらうための方法を考えるようになりました。


 

—— 現在は、ITインフラ本部でどのような業務に取り組まれているのでしょうか。

大久保:人事・総務から社内システムの改善、クラウド化の推進を担う部門の立ち上げまで、Tech Visionの実現に必要なことは何でも手がけています。幅広すぎて一言では表現できませんが、現在最もリソースを割いているのはエンジニア採用です。


 

松本 勇気 (まつもと ゆうき) 最高技術責任者(CTO)
2018年10月11日より合同会社 DMM.com CTO(最高技術責任者)に就任。
2018年8月まで株式会社Gunosyにて執行役員 CTOおよび新規事業開発室室長。
Gunosy創業直後に入社。これまでニュース配信サービス「グノシー」「ニュースパス」などの立ち上げから規模拡大、また広告配信における機械学習アルゴリズムやアーキテクチャ設計を担当し、幅広い領域の開発を手がける。新規事業開発室担当として、ブロックチェーンやVR/ARといった各種技術の調査・開発を行う。2019年5月よりDMM GAMES CTOを兼任。


松本:大久保さんは、テックカンパニー化を進めていくうえで、「必要だけれど僕の手が回らない」部分を、的確に助けてくれています。この役割が非常に大事なんですよ。「申し訳ないのですが、これもお願いしてもいいですか?」といった頼みは、たいてい引き受けてくれて、軌道に乗せてくれる。

大久保:僕としては、正直まだまだできることがあるなと思っています。たとえば、松本さんが実際のコーディング部分にまで関わっていける余裕を捻出できるように、もっと動かないといけない。言葉で伝えることは重要ですし、松本さんはそれが得意ですが、エンジニアに伝えるなら、コードで語る部分もあったほうがいいなと。

松本:たしかに、コードを書けるくらいの余力があったほうが、レバレッジがかかるかもしれないですね。現在の職務はCTOというより何でも屋なのですが、自分の職務をより技術サイドに寄せていくというのも一つの方向性かなと思います。

CTOレベルのエンジニアが参画中

—— 2018年末にTech Visionを発表されてから1年半ほど経ちましたが、進捗度合いはいかがでしょうか。

松本:良いペースで進捗を生めていると思います。大久保さんはじめ、他社であればCTOを務められるレベルのエンジニアがたくさん入社してくれていますし、新卒入社のメンバーも、技術力とモチベーションが非常に高い。

システム面でも、事業改善のスピードアップが求められる領域を、クラウドに移行していく動きが急速に進んでいます。また、どんな事業でも、KPI分析や機械学習アルゴリズムによる自動化・レコメンドなどを導入できるよう、データ基盤も整えてきました。

これらをベースに、2020年以降はさまざまな箇所で、自然と目に見える実績が現れるのではないかと考えています。たとえるならば、現在は畑を耕し終わった段階。これから成果の芽がどんどん出ていくはずです。

大久保:全社的に、多方面でチャレンジしていくカルチャーが強くなりましたよね。失敗から学ぶことが許容されるようになってきて、挑戦しやすくなったと思います。


 

—— DMM.comのテックカンパニーとしての強みはどこにあるのでしょうか。

松本:大きくは2点あると思っています。まず、データ量の多さ。DMM.comのサービスは3,000万以上のアカウントを保持しており、集まるデータの量は膨大です。

そして、事業の多様性。エンジニア養成機関『42 Tokyo』や『DMM WEBCAMP』のようなオフラインでの教育事業から、消防車両の企画・開発を行うベルリングのようなユニークな会社までを擁する会社なんて、日本中どこを探してもないと思います。


 

—— たしかに、GAFAのような世界的なテックカンパニーでも、消防車の事業まで手がけている会社は思い当たりません(笑)。

大久保:今後どんな事業が生まれ、どんな会社がグループインしていくのか、誰も想像できませんからね(笑)。

松本:来月の状況すら分からないですよね。最近も、農業関連事業として鳥獣被害対策を行う新会社・DMM Agri Innovationがいきなり立ち上がったり。次々と予想外の動きが起こっていくのが、この会社の面白いところです。

データウェアハウス(※企業活動で生じたあらゆるデータが時系列に保管されているデータベース)もしっかり整備されているので、豊富なデータを一気通貫で分析できます。

“事業視点”を持つテックカンパニーへ

—— Tech Visionの実現に向けて、現在取り組まれている課題は何でしょう。

松本:最も大きい課題は、育成ですね。1年半かけて、Tech Visionに即した評価制度を構築し、育成フローも整備してきました。現在はそれらに則り、メンバーの皆さんと一緒にレベルアップしていくフェーズに差し掛かっています。

—— 評価基準は、どういったポイントを重視されていますか。

松本:技術力の高さだけでなく、事業貢献のために動ける力を重視しています。我々は、あくまでも事業会社です。コーディング能力を評価するだけでは不十分で、エンジニアも、ユーザーに良いものを届け、事業成長に寄与するスタンスを求めます。採用時も、いくら技術力が高くても、そうしたスタンスにフィットしなければお見送りさせていただいています。


 

—— 社内のメンバーに事業視点を持ってもらうためには、どのような工夫をしているのでしょうか。

松本:事業視点を持てるようになるために、きちんと数字で語ることを意識してもらっていますね。目標を設定する際も、つくりきることそのものではなく、どんな数値にインパクトを与えるのかを考える。ユーザーに価値を届けられてこそ、事業に携わるエンジニアたりえるのではないかと。


 

—— 最後に、今後どのようにTech Visionを実現していくか、意気込みを教えてください。

松本:DMM.comを、テクノロジーやデータを活用することで勝っていける会社にしたいです。これまでは、市場選びやビジネスモデルづくりといった仕組みづくりに強みを持っていたのですが、これからはそこに「技術」も加えて、どんな市場でも真っ向勝負で勝ち切れる会社にしていきたい。

大久保:僕はいったん、目の前の課題にしっかりと取り組んでいきたいです。まずはTech Visionを掲げたときに設定した「3年」という時間軸を、全力で走り切っていきたいと思っています。

松本:大久保さんには、とにかく人を変えていってほしい。組織って、結局は人なんですよ。いい人さえいれば、良い事業やプロダクトが立ち上がっていく。テックカンパニーとしての土台づくりを、より一層進めていただけることを期待しています。

 

構成:小池真幸(モメンタム・ホース) 編集:オバラ ミツフミ(モメンタム・ホース)