教育、水族館、サッカークラブ。——領域の異なる40以上の事業を展開するDMM.comで、ほぼ全ての事業を管理・掌握している最高執行責任者(COO)村中悠介。

連載「建前なしの事業部談話」では、村中が各事業部の事業部長(メンバー)と対談。事業運営の実情について、建前なしで赤裸々に語っていきます。

今回は、電子書籍事業部の細山田智が登場。亀チョク経由で入社してから現在に至るまでのキャリアと、事業撤退の危機から這い上がり、業界TOP3を狙う電子書籍事業部の今を紐解いていきます。

経営者からDMM社員に転職。なぜ?

—— まずは、細山田さんがDMM.comに入社された背景についてお伺いします。入社以前は、どのようなキャリアを歩まれてきたのでしょうか。

細山田 智(ほそやまだ さとし)EC&デジタルコンテンツ本部 電子書籍事業部 部長
学生起業をきっかけに複数の会社を起業、バイアウト後も数社の経営に参画。2012年にDMM.comに入社し、ライブコミュニケーション事業の営業担当、経営企画室を経て、電子書籍事業部を担当。その他もう一つ別事業でも責任者を務める。


細山田:これまでのキャリアでいえば、会社を経営していた時間が大半です。学生時代に起業して長らく社長業をしていて、その会社を解散した後にエンジニアとしてサラリーマンを経験したのですが、20代半ばに再びシステム会社を立ち上げています。その会社はバイアウトしたのですが、その後もいくつかの会社で経営を任されるなどしてきました。


 

—— 経営者としてのキャリアを持つ細山田さんが、なぜDMM.comに社員として入社されたのでしょうか。

細山田:社長という職業柄、自分のスキルアップに充てる時間が少なかったんです。とはいえ経営スキルがずば抜けているわけではないので、再び学び直す機会を欲していました。

そんな矢先、DMM.comを紹介していただいたんです。「亀山会長の直下で新規事業に挑戦する機会がある」とエージェントから紹介を受けました。つまり、事業企画を会長にプレゼンして事業をつくる「亀チョク」です。亀山会長の直下で事業をつくる経験に興味が湧いたので、英会話事業を企画して応募しました。

しかし、予想だにしない出来事が起こります。無事に面接も通過し、会長にプレゼンをしていたときのことです。ほとんど話し終えたところで「ごめん、被ってた(笑)」と言われました。現在の『DMM英会話』となる事業企画がすでに存在していたそうなんです。

その際に事業化の話はなくなり、その代わりに既存事業に携わる機会をいただきました。正直「これだけプレゼンさせておいて失礼だな(笑)」とは思いましたが、縁を感じて入社を決めています。


 

村中 悠介(むらなか ゆうすけ)合同会社DMM.com COO
2002年にDMM.comに入社し、動画配信事業の営業担当を経て、事業責任者を務める。2011年に取締役就任後、アミューズメント事業、アニメーション事業など多岐にわたる事業を立ち上げる。 2017年11月サッカーベルギー1部リーグ シントトロイデンの経営権取得。2019年5月よりDMM GAMES CEOを兼任。現在DMM.comの40以上ある事業を統括する。


村中:とどのつまり、亀チョクは落ちてるってことです(笑)。ただ、これまでの経験からも、数字に強く事業推進が得意なことは分かっていました。そこで、当時伸び悩んでいたLC(ライブチャット)事業部の立て直しを任せたんです。


 

総合書店+αで、牙城に挑む

—— 電子書籍事業部の事業部長には、どのような経緯で就任されたのでしょうか。

村中:LC事業部を軌道に乗せたタイミングで、今度は電子書籍事業部の前身となる部署に営業マネージャーとして異動してもらいました。こちらもまだまだ事業を伸ばせる余地があると踏んでいたので、細山田に事業の立て直しを託したんです。

細山田:これといって特別なことはしていませんが、僕が事業部に配属されてからの4年間で、売上は30倍以上に成長しています。そもそも電子書籍ユーザーが増えているという背景もありますが、事業は非常に好調です。

最近は取り扱い商品数がぐっと増え、ジャンル特化ではなく総合書店としての認知が、緩やかに拡大しています。


 

—— 急激な成長ですね……!どのような施策で事業を伸ばしたのでしょうか。

細山田:“ウルトラC”は存在せず、本当に地道な改善を続けてきただけですよ。もともと、村中さんと山本執行役員が中期戦略をつくっていたので、あとは具現化するだけ。たとえば、UXの改善。「まとめ買いの機能がなかったので、一括で買えるようにする」といった当たり前を一つ一つ実装していったことで、売上は格段に伸びました。
あとは、どの書店でも販売されてるコンテンツの仕入れなど、電子書店としてやるべき当たり前のことに、事業部全員で地道に取り組みました。

村中:それだけで、業界のTOP3を狙える立ち位置にまで来ることができたんです。現在がちょうど「勝負の土俵に立ったタイミング」だと思っています。でも、まだまだやれていないことも多いよね。

細山田:村中さんが言う通りで、若年層に向けたSNSマーケティングや、認知を一気に獲得するマス広告にはまだ本腰を入れられていません。それらを実行することで、一気にゲームチェンジを起こせる可能性もあると思っています。

村中:一気に市場を取りに行く上では、ブランドづくりが必須だよね。ただ総合書店を謳っても面白くないし、「DMM.comの電子書籍といえば」で想起できる“色”があると、勝負がつくんじゃないかな。

細山田:そうですね。他の書店であれば、オリジナルの連載を制作したり、購入時に特典を配布したり、独自のブランディングを始めています。私たちも『DMM.com』というプラットフォームと連携している強みがありますし、ポイント還元率が非常に高いといった強みはありますが、もっと分かりやすい“色”をつけることが、次の課題だと思います。


 

村中:ちなみに、具体的に仕込んでいる施策はあるの?

細山田:記事には書けないですけど、当然ありますよ(笑)。たとえばDMM.comはオリジナルゲームを展開する合同会社EXNOAを子会社に持っているので、それらと連動してコンテンツをつくることも可能です。

いち書店として事業を伸ばしつつ、DMM.comのアセットを活用したコラボレーションをすることによって、非連続の成長曲線を描くこともできると思っています。


 

撤退の危機から、業界TOP3へ

—— 電子書籍事業部には今後、どのような展望があるのでしょうか。

細山田:繰り返しになりますが、対外的な話でいえば、まずは業界TOP3。また個人的には、DMM.comが展開するC向け事業の中で、売上ナンバーワンを狙っています。

村中:電子書籍事業部の前身は同人誌を扱う部署だったのですが、数年前までは他社サービスにまったく歯が立たない状況だったんです。しかし今では、業界トップまで巻き返すことができました。

電子書籍もランキング圏外だったところから、業界のTOP3を狙えるポジションまでこぎ着けることができました。ここから勝負を仕掛けるタイミングなので、細山田が言っていることは現実味があると思っています。

細山田:僕が一番ワクワクしているんじゃないですかね? 正直ここまで持ってくるまで大変でしたが、一気に勝負を仕掛けられるところまできたので、どんなことを起こせるのか楽しみなんです。


 

村中:今の書籍市場は紙が半分、電子が半分くらいなんです。しかし今後、間違いなく電子書籍の売上は伸びていくでしょう。まだまだ市場は発展途上ですし、今がチャンスです

過去には事業撤退を考えなければならないタイミングもありましたが、ここでギアを入れれば、日本トップの事業をつくるとができると思っています。それをどれだけ本気で信じ抜けるかが、勝負の分かれ目になるはずです。

細山田:電子書籍市場の市場規模は、現在3,500億円です。しかし5年後には、6,000億円規模になると言われています。スピードとやりきる力が、今まで以上に必要になるでしょう。

ですから、ベンチャースピリットを持った仲間を迎え入れたいですね。自分たちは挑戦者であり、すでに市場を占拠する事業に真正面から勝負を挑むんだという、強いマインドを持った人にしか、活躍の場はないと思います

これは半分ジョークですけど、入社してすぐに、村中さんをイジれるくらい肝の据わった人がいてくれたら僕は嬉しいですけどね(笑)。


 

村中:過去にいたよね。事業部の懇親会で、新卒の男の子に「悠介さ、俺たちのことちゃんと見てますか?」って(笑)。

細山田:そうでしたね(笑)。今は競争が激化しているタイミングなので、彼のように勢いのある人材にとって、思う存分自分の力を発揮してもらえる環境なんじゃないかと思っています。

村中:「C向け事業の中で、売上ナンバーワン」という話、期待しているよ。

 

構成:オバラ ミツフミ(モメンタム・ホース) 写真:高山 潤也