教育、水族館、サッカークラブ。——領域の異なる40以上の事業を展開するDMM.comで、ほぼ全ての事業を管理・掌握している最高執行責任者(COO)村中悠介。
連載「建前なしの事業部談話」では、村中が各事業部の事業部長(メンバー)と対談。事業運営の実情について、建前なしで赤裸々に語っていきます。
今回は、2019年9月にグループインしたファーマリーの石泰成と貝﨑敬一が登場。グループインの経緯から、中古農機の販売を足がかりに、農産業の“不”を解決するインターフェースとしての未来について対談しました。

資金調達をストップし、グループイン

—— ファーマーリーのお二人は、村中さんとどのようにして出会われたのでしょうか。

村中 悠介(むらなか ゆうすけ)合同会社DMM.com COO
2002年にDMM.comに入社し、動画配信事業の営業担当を経て、事業責任者を務める。2011年に取締役就任後、アミューズメント事業、アニメーション事業など多岐にわたる事業を立ち上げる。 2017年11月サッカーベルギー1部リーグ シントトロイデンの経営権取得。2019年5月よりDMM GAMES CEOを兼任。現在DMM.comの40以上ある事業を統括する。


村中:ファーマリーは当時、資金調達に動いていたんです。僕はそのことについて詳しく知りませんでしたが、会長(DMM.com 最高経営責任者:亀山敬司)を介して食事会をセッティングしてもらい、どんな事業をつくっているのか話を聞いた記憶があります。

石 泰成(せき てそん)株式会社ファーマリー 代表取締役社長
関西学院大学卒業、同年に(株)リクルートホールディングス に入社。中途事業本部にて、中途採用コンサルティングに従事。2017年より(株)ジラフにて営業、事業開発、POを担当。2018年4月にファーマリーを創業、2019年さらなる事業拡大のためDMM.comへジョイン。


石:そうですね。ほぼほぼ資金調達の目処が立っているなかで、知人に会長を紹介してもらい、DMM.comにジョインする選択肢を得ました。そのタイミングで村中さんを紹介してもらい、一度お話をさせていただいています。

村中:でも、特にグループ入りについて話はしてなかったよね。ただただ事業へのアドバイスをしていた記憶がある。

貝﨑:おっしゃる通り、村中さんとの間では、M&Aについて詳しく話した記憶がないですね。僕らのビジネスモデルや今後の展開についてアドバイスをいただき、「もし一緒にやるなら、こんな可能性があるね」といった会話を交わした程度だと記憶しています。 そういえば一度、成田の事業所まで、わざわざ足を運んでいただいたことがありましたね。

村中:ファーマリーの事業所が成田空港の近くにあると聞いてたので、中国出張で成田空港を利用した際に、顔を出しにいったんです。ただ、車を走らせど、走らせど、なかなか到着しない(笑)。かれこれ30分はかかった気がします。

貝﨑 敬一(かいざき けいいち)株式会社ファーマリー 取締役副社長
京都大学大学院卒業、(株)リクルートホールディングスに入社し、新卒事業本部に配属。2017年より自動車事業本部事業開発グループにて事業開発に従事。2017年より(株)Azoopに参画。事業開発責任者として中古トラックのWEB流通事業の立ち上げに従事。2018年4月にファーマリーを共同創業し、現在に至る。


貝﨑:全国を自動車で回っていた僕らの感覚だと、車で30分は近い距離感なんですよ(笑)。

僕らとしては、事業所までわざわざ足を運んでいただけて嬉しかったです。既存投資家の方も、次のラウンドで投資を検討してくれていた方も、都心からの遠さから「いくいく詐欺」だったので(笑)。

石:成田では、以前お食事をさせていただいた際より詳しく、事業についてディスカッションをしました。これまでは投資家の目線でアドバイスをもらうことがほとんどでしたが、村中さんからは事業家としての視点から意見をいただき、とても新鮮でしたね。

また村中さんの考えは、僕らが見据えている事業戦略と近いものがありました。なので、DMM.comにグループインすれば、事業成長のスピードも非常に早いだろうと感じたんです。VCからの資金調達ではなく、グループインを選んだ理由の一つでもあります。

トラクターから農業の未来を見据えて

—— 村中さんから見て、お二人の印象はどのようなものでしたか?

村中:とりあえず、人間性はいいだろうなと思いました。農業というある種ウェットな世界では、商売っ気がありすぎると毛嫌いされてしまいます。彼らには、そうしたいやらしさがなく、素直な人たちに見えました。とはいえ、これまで大企業でビジネス経験を積んでいることもあり、目の付け所がいいですよね。

また見た目も若すぎず、年齢層が高い農業従事者の中にいてもなじむ、いい塩梅だなと(笑)。

—— 「中古農機のマーケットプレイス」というファーマリーの事業は、DMM.comにとってどのような位置付けになるのでしょうか?

村中:とっかかりは中古農機のマーケットプレイスですが、そこからいかようにも派生していくポテンシャルを持っていると思います。

農業はまだまだIT化されていない領域で、DMM.comとしても関心が高い。ファーマリーをきっかけに業界と接点を持つこともできますし、ファーマーリーが今後事業領域を拡大していけば、業界に大きなインパクトを残すことも可能だと思っています。

その実、すでに農家さんや農機のディーラーさんから、困りごとがどんどん集まってきているんです。それらに対してソリューションを提供していけば、業界の発展に寄与できるはず。

石:村中さんがおっしゃる通りで、農業ってまだまだ課題が多いんです。たとえば僕らが事業を展開している中古農機の売買だけでも、解決すべき“不”がたくさんあります。しかし、そこに透明性をもたらすだけでも、全国を回る必要があり、とにかく時間がかかる。

また在庫を抱えるモデルなので、スケールを目指すためには、先行投資で機材を購入する必要があります。そのためにはまず、購入資金として投資を受けなければいけません。しかし、調達を繰り返すたびにバリュエーションは高くなってしまう。つまり、回数が限られているわけです。

結果的に、業界の“不”をスピーディーに解決するためには、DMM.comのように資金力に長けていて、全国にネットワークを持つ事業会社との連携が不可欠だったんです。


 

—— グループインしたことで、事業成長のスピードが上がっている実感はありますか?

貝﨑:たとえば販社さんとの連携は、僕らだけで行なっていたときに比べて圧倒的に速くなっていますね。DMM.comというバックグラウンドがあることで、僕らへの信頼性も高くなり、無駄な遠回りがなくなったと感じます。

村中:僕らもファイナンスの支援がしたいわけではないので、経営には自由度を持たせつつも、戦略の指南や信頼の担保など、しっかり中に入って支援しているんです。

脱・歩くインターネット

—— 村中さんはファーマリーについて、「いかようにも派生していくポテンシャルを持っている」とおっしゃっていましたが、具体的にどのような成長を期待しているのでしょうか?

村中:石と貝﨑が、早々に経営だけにリソースを割く体制をつくってほしいです。スケールを目指すには、いくらウェットな世界とはいえ、誰が買い付けにいっても、販売しにいっても、同様に成果を出せる状態をつくる必要があります。

採用なのか、育成なのかは問いませんが、とにかく早く権限委譲を進めるべき。現在のビジネスモデルは農業領域の中で横展開できるものなので、その体勢をいかに早くつくれるかが、勝負の分かれ目です。

また、アナログなものをデータ・ドリブンにしていく必要もある。再現性のある事業展開によって次々にポジションを獲得し、「何かあったときは、DMM.comに頼ればいい」というポジションを取れるかが肝要です。

石:つまり、本来であれば3年かかることを、DMM.comのリソースをフル活用して、1年でやろうってことなんです(笑)。

貝﨑:解決すべき不が多いとは言いつつ、業界そのものがドラスティックに変わるタイミングだとも思っています。というのも、変えようと奮闘するプレイヤーは全国各地にいるんです。

問題なのは、全国各地に分散していて、分断が激しいこと。ただ、そのキープレイヤーの皆様からは濃い信頼をいただけているので、インターフェースになることができれば、一気に提供できる価値が広がっていきます。我々はとにかく、橋渡し役にならないといけないんです。

村中:今はまだ、テクノロジーで橋渡しができていない。地道に足で橋渡しをしている、いわば“歩くインターネット”なんです。だから早期にこの状態を脱し、農業領域でもっともプレゼンスのあるIT企業を目指してほしい。

貝﨑:そうですね。僕らがやっていることは、中古農機の売買ではなく、農業界全体への利益の還元です。情報の非対称性を解消し、全国各地の有意義な取り組みを共有するプラットフォームになって、万屋として課題を解決する。

一刻も早くその世界観を実現すべくDMM.comにジョインしていますから、引き続きスピード感を持って事業を育てていきます。

 

構成:オバラ ミツフミ(モメンタム・ホース) 写真:清水 舞