■企業のアセットを活用し、大きな事業を立ち上げたい人に向けた記事です
■一次産業からインフラまで、新規事業を立ち上げ中の松山玄樹が登場します
■経営陣の話についていけなかった一年を過ごすも、事業づくりのノウハウをゼロから学び、再び事業家の道を目指すストーリーをお届けします

遊ぶように仕事がしたい

—— 松山さんのファーストキャリアはエンジニアだったとお伺いしています。現在は事業家としての側面をお持ちですが、なぜエンジニアになる道を選択されたのでしょうか。

松山 玄樹(まつやま げんき)セールスソリューション本部 農業事業部 部長
ロボットアプリケーション、AIクラウドサービスを中心にシステム開発とプロジェクトマネジメントの経験を積んだのちにDMM.comに転職。COO室にて新規事業企画、グループ会社経営支援、M&Aに従事。その後、農業事業部の設立に伴い異動し現在は鳥獣被害対策や中古農機流通、人材派遣の事業推進に邁進中。


松山:学生時代は、経営者になることを志していたのです。当時は珍しく、身近な先輩がベンチャーでインターンをしていて、彼の姿を見て「起業」という選択肢が意外と近くにあることを知りました。

会社を経営したいというよりは、自分で会社を立ち上げれば、知人たちと遊ぶように働くことができるのではないかと考えていました。プライベートと仕事の境目がなく、毎日が充実するのではないかと夢想していたのです。

では、起業するにはどうすればいいのか。まずは自分もビジネスの経験を積もうと、ウェブメディアを運営するベンチャーでインターンをすることにしました。インターンとはいえ、具体的に業務が割り当てられたわけではなく、やりたいことさえあれば予算を与えられる自由な環境です。まずは売上をつくろうと、わたしも見よう見まねでメディアをつくることからはじめました。

とはいえ、やっていたことといえば、アフィリエイトで売り上げをつくるために、記事を量産してSEOを強化することくらいです。ビジネスに触れられたという意味では貴重な経験でしたが、とてつもなく虚しい気持ちにもなりました。社会に価値を見出している気持ちになれなかったのです。

そこで、価値あるプロダクトをつくれるエンジニアになろうと決意しました。ファーストキャリアの選択基準は、「未経験でもエンジニアとして採用してくれる」ことだけです。コードが書けなければ、起業を志す同世代の輪に入れないと思っての選択でした。


 

—— 新卒で入社した会社では、どのようなお仕事をされていたのでしょうか。

松山:まずは、エンジニアとしての素養を身につける研修からスタートです。とはいえ手厚いサポートがあるわけではなく、入社初日にカンボジアに行くことになりました。「現地の名門大学でシステム開発の勉強をしてきなさい」というお達しで、最初は新卒のメンバーだけで社会人生活をスタートすることになりました。

しかし、実際に行ってみると、授業の準備ができていないのです。「授業のコンテンツはありますか?」と尋ねると、「まだ準備できていません」と。「いやいや、おかしいでしょ」と思いながら、拙い英語で異議を唱え(笑)、大学側の準備が整うまで、自分たちで勝手に学習をはじめました。「社会人生活のスタートから、何をやってるんだろう」って感じですよね。

とはいえ自走を求められる環境だったのは間違いなかったので、社会人としてのマインドセットを養うことができました。3ヶ月後には帰国し、すぐに実務を任されています。

私が担当したのは、ロボットアプリの受託開発業務です。ロボットが人間のように振る舞えるアプリケーションを開発することが、私たちのミッションでした。

たとえば、人間の会話には“間”があります。「話と話の間をどのくらい空ければ、人間のように話せるのか」ということを解き明かし、それをロボットにインストールすることをしていました。

業務の難易度は高かったのですが、一度構造を理解してからは早かったです。当時はまだロボットがそれほど社会に浸透していない時期だったので、まだまだ手慣れた開発ができる会社が少なく、当時は日本で一番品質の高い制作会社だと認識されていたと思います。

キャリアの早期からディレクションやマネジメントを任せていただくこともでき、結果的に充実したファーストキャリアだったと思います。


 

環境が変われば、人間は変わる

—— ロボットアプリ開発のパイオニア企業に在籍し、順調にキャリアを形成されていたんですね。なぜ、転職を考えられたのでしょうか。

松山:システム開発のノウハウをある程度体系化できたので、今度は経営を学ぼうと考えたのです。テクノロジーには明るかったので、テック系の事業をつくれる環境への転職を目指していました。

いくつか候補があった中で、DMM.comを選んだ一番の理由は、他の企業よりも自由にやりたいことができる環境だったからです。私のバックグラウンド的に、プロダクトオーナーとして採用のオファーをしてくださる企業が多かったのですが、そうではなく、よりビジネスサイドで働きたかった。それが叶うのがDMM.comだったのです。


 

—— DMM.comに入社してからは、どのようなキャリアを歩まれてこられたのでしょうか。

松山:最初はいくつかの新規事業開発に携わらせてもらったのですが、そのどれもが予算承認を得られず、事業化することができませんでした。これまで「いかに高品質で、いかに早く、いかに安くつくるか」を考えるシステム開発というビジネスモデルに携わってきたので、それ以外の事業のつくり方が分かっていなかったのです。

ビジネスモデルを考えるのは好きだったのですが、戦略に落とし、それをエグゼキューションすることができず、大変に苦労しました。会長の亀山はじめ、経営陣の話についていくこともできず、まるまる1年間空回りしていましたね。


 

—— どのようにして、事業家としての視点を身につけていったのでしょうか。

松山:「事業家としての視点が求められる環境に放り込まれ、身につけざるを得なかった」というのが正直なところです。

M&Aでジョインしたグループ会社の支援を担当することになったのですが、出向先からしてみれば、私が事業づくりのノウハウを持っていないことなんて、知ったこっちゃないですよね。

グループ会社の経営陣と事業計画を立てて、それを実現するにはどうしたらいいのかを考え、「この商品を売るためには営業コストがどれくらいかかるのか」とか、「人員が足りない」とか、「採用にいくらかかるのか」とか、そうしたことをしているうちに「戦略はこうやって立てるのか」と現場で身につけていきました。

また別のグループ会社では、ミッション・ビジョンの策定にも参加させてもらうなど、多くの学びを得ました。「事業戦略はミッションから落ちてくるものだ」と考えていたのですが、「事業戦略からミッションを導くこともできる」というのが、当時の大きな学びです。

たとえばビジネスモデルの競争優位性や、社会的な価値を考えると、やるべきことが見えてくる。そうした学びを複数のグループ会社で応用する機会があったので、自然と事業づくりのノウハウが溜まってきました。気づいた頃には、会長や経営陣の話も理解できるようになっていましたね。


 

お金で買えない“経営陣の眼力”

—— ファーストキャリアではプロダクトを形にするエンジニアリングのスキルを、DMM.comでは事業をつくるノウハウを得たんですね。今後は、もともと描いていた起業家の道へ進まれるのでしょうか。

松山:それが、少なくとも直近では考えていません。スキルやノウハウがあるからといって起業家として成功できるわけではないですし、今はそれより、大きな事業をつくれる人材になりたいと思っています。

DMM.comに入社した理由の一つでもあるのですが、経営陣の事業に対する眼力がずば抜けています。たとえば、会長の亀山は数字への感性が抜群に優れていますし、COOの村中はビジネスモデルの理解が非常に鋭い。58事業を全て掌握しているだけあって、事業づくりの視点が卓越しているのです。彼らと比較すると、私はまだまだです。

もちろん起業すれば、少なからず売り上げをつくれると思いますし、自分が経営するからこそのメリットも得られます。とはいえ、DMM.comの経営陣と一緒に働くことで得られる彼らの視点やノウハウには、お金では買えない価値がある。

事業家としての視点が身についてきたとはいえ、これまでのキャリアを振り返ってみると、労働集約的な事業に携わってきたのがほとんどです。ですから、まずはDMM.comで、スケールする事業を生み出すことに専念します。


 

—— 現在は、事業づくりに取り組まれているのでしょうか。

松山:まだ準備段階なので詳しくは言えないのですが、いくつか新規事業を仕込んでいます。領域もさまざまで、一次産業からインフラまで事業のタネを持っている段階です。そのどれもが、スケールする可能性を秘めています。

よく会長の亀山が「DMM.comは、節操なくなんでもやる」と言っていますが、まさにその言葉通りです。また、“札束で殴り合う”ようなビジネスは考えておらず、どれもが仕組みで勝てるビジネスモデルです。そうした「ニッチ突き抜け」の「勝てる事業」を見つけられるようになったのも、DMM.comで働いていたからだと思います。


 

共通言語は「事業が好き」という想い

—— DMM.comでは、学生時代に描かれていた「遊ぶように働く」ワークスタイルを実現できていますか。

松山:間違いなく実現していると思いますね。DMM.comは人材のバックグラウンドがさまざまで、なおかつ明文化された独自のカルチャーもありません。それゆえ、良くも悪くも共通言語がないのです。

強いて共通点があるとすれば、「事業が好き」ということです。仕事中はもちろん、飲み会でも、ずっと事業の話をしています。事業づくりが大好きな人間としては、仲間を得た感覚があり、毎日が楽しくて仕方がないのです。

そういえば年末年始に、「DMM.comとは、なんぞや」ということを考えてみたんです。株主はいないし、ビジョンもミッションもない。では、この会社の存在意義はどこにあるのかを一人で思い巡らしました。

私の結論は、「会長の亀山もきっと、仲間と楽しく仕事をし続けるために、いくつもの事業をつくってきたのではないか」です。遊ぶように仕事をし続けるためには、やはりしっかりと利益を上げなければいけません。その延長線上に、今のDMM.comがあるのだと思っています。


 

—— 最後に、DMM.comで活躍できる人物像について、松山さんの視点からお伺いさせてください。

松山:会長の亀山の本心は分かりかねますが、先ほど申し上げた「仲間と楽しく仕事をし続けるために、しっかりと利益を上げる」という思想に共感できるのであれば、きっとDMM.comでも活躍できるはずです。

ただ、私がそうであったように、手取り足取り教えてくれる環境ではありません。好奇心を持って、自らの足を動かしながらアウトプットを出し続けられなければ、そもそも機会が得られない。

とはいえ、本当に誠実な会社です。やるべきことをやる人間に対しては、年次や経験にとらわれず打席を用意してくれるので、誠実にコトに向かえるのであれば、活躍のチャンスが回ってくると思います。

 

取材・文:オバラ ミツフミ 写真:つるたま