3Dプリント事業は「専門知識が問われる」領域ですが、お二人は、畑違いの業界から移籍してきたそうです。それでもDMM.comが3Dプリント事業で業界トップを走り続けられる背景には、ラーニングとアンラーニングを徹底する姿勢が関係しているのだといいます。市場を切り開き、3Dプリントの存在感を日々拡大する挑戦と、活躍できる人物像、今後の展開などを語りました。

国内シェアで無双、市場を切り開く3Dプリント事業部

―まずは、3Dプリント事業部の具体的な事業概要について、お伺いさせてください。

川岸 孝輔(かわぎし こうすけ)
ビジネスプランニング本部 .make 3Dプリント事業部 部長 / プロデューサー
国内楽器メーカーにて外装設計、回路、PCBの設計、音響測定器の設計、および組み込み用ソフトウェア設計に約9年間従事。DMM.comに2014年に入社した後、シニアエンジニアとしてハードウェア系の設計と対顧客向けのコンサルタント業務を担当。現在はDMM.com 3Dプリント事業部の責任者。


川岸:私たちは、3Dプリントの“トータルプラットフォーム”を目指して、事業を運営しています。具体的には、3Dプリントの受託製造から3Dプリンターの販売やレンタル、運用代行などです。いずれは中古販売事業等も展開し、3Dプリンターに関連するビジネス全般を網羅することを見据えています。

―現在も、新たな事業を模索している最中なんですね。もともと、現在のようなビジネスモデルだったのでしょうか。

川岸:いえ、これまではずっと製造を受託するサービスを運営していました。現在も受託製造は継続していますが、事業を拡大するため、従来とは異なるビジネスモデルを開発したんです。
3Dプリンターの値段は年々下がっていますが、3Dプリンターを運用するための環境構築には、本体を買う以上のコストがかかります。つまり、購入しただけでは、運用が難しい。そこで私たちが運用を代行することで、閉鎖的だった業界の拡張に貢献しながら、「つくるのが難しいけれど、ほしいもの」を手軽につくり、販売するためのサポートをしています。

―事業部の雰囲気についてもお伺いさせてください。

永井 晃人(ながい あきひと)
ビジネスプランニング本部 .make 3Dプリント事業部 エンジニアリングマネージャー
熊本高等専門学校専攻科電子情報システム工学専攻卒業。在学中にWEB系スタートアップ企業の開発責任者として新規事業の立ち上げ・開発に従事。卒業後、CTO就任。2018年よりDMM.com .make事業部(現3Dプリント事業部)入社。フルスタックエンジニアとして設計・開発・運用・保守まで幅広く担当、開発体制やチームの問題点を分析し開発体制改革も実施。2019年2月より現職。


永井:「スタートアップ的」だと思います。和気藹々としていて、メンバーの挑戦的な提案を受け入れ、失敗にも寛容です。ビジネスサイドとエンジニアの壁もなく、情報共有もしっかりやります。
「エンジニアだから、エンジニアリングしかしない」という利己的な動きをする人もいません。サービスの一員としての意識を全員が持っていて、肩書きや役割ではなく、組織への貢献をモチベーションに働くメンバーで結成されています。

畑違いの業界から異業種転職。3Dプリントに魅せられたワケ

―お二人の経歴についてもお伺いさせてください。永井さんはどのような経緯で、DMM.comに入社されたのでしょうか。

永井:前職は、Web系のスタートアップで4年間ほどCTOをしていました。しかしなかなか軌道に乗らず、Webサービスの開発やコワーキングスペースの運営など、新規事業をつくっては撤退し‥ということを繰り返していましたね。
転職を考えていたとき、会社を選ぶ軸は「成功事例を数多く持っていること」でした。私は失敗ばかりしていたので、今度こそ事業を成功させるノウハウを身に付けたいと思っていたんです。DMM.comは会社選びの軸にも当てはまっていましたし、3Dプリントは今後伸びていく事業だと思っていたので、ジョインを決めました。

川岸:私も永井と同様、畑違いの分野の出身です。前職は楽器メーカーで、主に音響設計の仕事をしていました。当時から3DCADなど3D関連技術は頻繁に利用していたため、3Dプリントに関する知見がまったくないわけではなく、関心も抱いていました。「今後、製品を簡単に作れる世の中になれば、楽器業界はもっと面白くなるのではないか」と考えていたんです。
そういった経緯もあり、ハードウェアの設計エンジニアの仕事ができるDMM.comを転職先に選びました。もともとはDMM.make AKIBA(DMM.comが運営するモノづくりのためのプラットフォーム)で働いていましたが、3Dプリント事業部がDMM.makeと別部門に分かれるタイミングで、事業責任者として3Dプリント事業部に移籍したんです。

―入社前と、入社して実際に働いてみた後で、ギャップはありましたか?

永井:想像以上に専門的な領域でしたね。3Dプリントに関する知識が少なかったため、入社前は「データさえあれば簡単に製品をつくれるだろう」などと考えていました。しかし、実際はかなり専門的な知識が問われる仕事でした。
3Dプリンターは、装置のタイプによって造形に適した製品が異なります。素材も多種多様で、私もすべてのノウハウを網羅できているかとはいえません。そうした事実を知らないと、「3Dプリンターさえあれば、なんでもつくれる」といった勘違いを起こしてしまうのです。

川岸:「3Dプリンター」と一口にいっても、のりで固めたり、粉をレーザーで焼き固めたり、樹脂をレーザーで固めたり、様々な造形手法があります。「3Dプリンター」という名称から、どんなものでも簡単につくれる印象がありますが、正直なところ、面倒な作業も非常に多い。
私もそうした知識はなかったので、DMM.comに入社してからすごく勉強しました。現在は日本語でも3Dプリントについて勉強しやすい環境が整いましたが、私が学んでいた当時は英語の情報しか出回っておらず、苦労した覚えがあります。

経験の有無より、成長意欲を問う。活躍するのは“スポンジ人材

―専門知識が問われる領域ということで、採用においては、3Dプリントの知識や、近しい領域での業務経験を重視されるのでしょうか。

川岸:いえ、後から身につけられるので、知識や経験は問いません。事実、私たちのチームにも、入社する前から3Dプリントの専門知識に明るい人材はいませんでした。
知識があることよりむしろ、ラーニングとアンラーニングが適切にできることの方が重要です。3Dプリントは新しい分野だけに技術の進歩も早く、過去に得た知識が役に立たなくなるまでのスパンも早い。だからこそ、自分の知見がいつまでも通用し続けると思わず、常に学習し続ける姿勢を持っていることが大切なんです。

―もともと知識を持たないところからキャッチアップし、活躍されている人の事例はありますか?

川岸:学生時代にはDMM.make AKIBAで、大学卒業後には3Dプリント事業部でアルバイトを経験し、現在は正社員として働いているメンバーが一人いますね。「3Dに興味があるんです」と申し出てくれたんです。彼は非常に素直な性格で、吸収力が高いからこそ、事前知識を持たなかったにも関わらず、活躍できているのだと思います。

―メンバーがこれからも学習を継続していくために、組織づくりで心がけているポイントはありますか。

川岸:成果を適正に評価することをとても大切にしています。たとえば、永井が入社したタイミングでは、環境もあまり整っておらず、業務を通じてフラストレーションを抱える場面が、今と比べると多かったはずです。しかし彼は、私の期待を超えるスピードで学習し、大きく活躍してくれました。そのような動きをしっかり評価できるよう、心がけています。

永井:役職ではなく、努力に紐づいて評価してもらえることは、学習を継続するモチベーションになっていますね。私はエンジニアとして入社しましたが、エンジニアリング以外の業務を手がけたときも、しっかり見てもらえている実感があります。積極的に事業に取り組む姿勢が身につくのは、川岸がしっかりと評価してくれるからだと思っています。

洋服をプリントする未来がくる?3Dプリンターを家庭に普及させる展望

―今後の3Dプリント市場の展望についてもお伺いさせてください。3Dプリンターは今後、私たちの生活に馴染み深いものになっていくのでしょうか?

永井:いずれ紙のプリンターと同様に「一家に一台」の世界観になると思っています。川岸とはよく、「自宅で衣類をプリントする時代になるかも?」という話をしていますね。

川岸:洗濯をする感覚で、今日着ていた服を原料に、新しい服を生産する。そうしたことが技術的に可能になれば、一家に一台、導入される未来も見えてきます。衣食住のいずれかに密接に関わるようになれば、3Dプリント市場は急速に拡大していくでしょう。

―3Dプリンターが家庭に普及すると、面白い未来になりそうですね。最後に、3Dプリント事業部の、今後の展望についてお伺いさせてください。

永井:「3Dプリントと言えば、DMM.com」と言われないといけないな、と思っています。3Dプリントという新しい製造手法があり、3Dプリンターを購入せずとも利用ができる——今後はサービス上での顧客体験をより向上させるため受注処理を最適化し、人の手を介さずとも、受注から製造、配送までが完結する、さながらAmazonのようなビジネスモデルの構築を目指しています。

川岸:世界に遅れをとっている現状も打破したいですね。現在は国内トップシェアですが、まだまだ市場自体が小さい。時間はかかるかもしれませんが、同業他社とも連携し、まずは市場を成熟させていきたいです。

永井:3Dプリント技術は日進月歩で進化しますから、現状トップシェアを誇る企業が、明日には追い越されていることもあり得ます。現段階で競合と争っていたら、ポテンシャルに溢れた3Dプリント市場自体が潰れる可能性だって考えられる。
私たちは、装置や材料をつくるメーカー、サービスを運営する事業会社といった関連企業と手を取り合い、市場の拡大に努めていきます。思い描いている将来への到達度でいえば、まだ数%くらい。伸び代だらけのフェーズだと思っているので、チャレンジ精神旺盛な方のジョインを心待ちにしています。

構成:オバラ ミツフミ(モメンタム・ホース) 編集:岡島 たくみ(モメンタム・ホース)